新庄市鳥越から舟形町へほぼ南北に走る舟形断層。国土地理院の都市圏活断層図では、北側に位置する新庄東山断層と同様に「推定活断層(明確に特定できないか、今後も活動を繰り返すか不明なもの)」として紹介している。
緩くなる傾き
舟形断層の北端には、丘陵の一部が大きく削り取られた場所がある。地層全体が南側を向いてむき出しになり、褶曲(しゅうきょく)構造が明瞭な新庄市鳥越の大露頭だ。東側の地層はほぼ45度に傾斜しているが、西側に進むにつれ40度、35度と傾きが緩くなる。「こうした違いは、東北日本が東から受けている圧縮運動の影響によって生じる」。山形大名誉教授の山野井徹は解説する。
山野井によれば、露頭の東側は古い地層で、西に行くにしたがって新しい地層となる。古い地層は、東西圧縮の影響を長く受けているため変位が累積し、傾斜が次第にきつくなる。反対に、新しい地層は圧縮を受ける時間も短いため、傾斜は比較的緩くなる。鳥越の大露頭は、いわば圧縮運動の進行を記録する「レコーダー」ともいえる。
「山形県 地学のガイド」(コロナ社)によると、現在の新庄盆地は1500万年前ごろには完全に海の下にあった。しかし、その後、火山活動が活発化し、長い年月をかけて奥羽山脈が隆起。続いて出羽丘陵も上昇した。庄内の海とつながっていた新庄盆地周辺は日本海と分断され、浅い海から湖へと変化していく。一帯はさらに隆起が進み湖は消滅、現在のような新庄盆地ができあがった。
「鳥越の大露頭」の東側にある礫(れき)や泥の地層は「山屋層」と呼ばれる。新庄湖が徐々に浅く埋め立てられていく40万~50万年前ごろの堆積物で、本来この地層は下にあるはずだが、東西圧縮によって斜めに持ち上げられたため、大露頭の東側では地表まで到達する。「山屋層は地球の成り立ちからすれば比較的新しい地層。この地層がこれだけ大きく変形しているということは、山屋層が堆積を始めたころ、つまり40万年前ごろから激しい圧縮運動が起きたことが分かるという点で重要な露頭だ」
「都市圏活断層図で推定活断層としたのは、明確な証拠が確認されなかったからだろう」と山野井は言う。「しかし、褶曲は地下の断層が動くことで生じる現象。舟形断層は、都市圏活断層図で引かれている線そのものではないかもしれないが、近くの地下に断層があることは確実」
新庄市鳥越にある大露頭。東側(写真右)の地層ほど傾斜がきつくなっている(山野井徹氏提供)
続く褶曲運動
元神戸大教授の杉村新は戦後、舟形町を流れる小国川周辺で行った研究で「大地が動く」ことを実証した。「杉村さんの研究によって、褶曲運動は新しい時代にも引き継がれていることが分かった。鳥越の大露頭の傾斜は今後さらにきつくなることが予想される」と山野井。
「推定活断層」とされた舟形断層だが、鳥越の大露頭が物語るように、周辺は長い間、褶曲運動が続いてきた。褶曲は大地震と密接に関係しており、地震への備えが不可欠なのは間違いない。=敬称略
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