どんな地震が、いつ起こるのか-活断層周辺に住む人々にとって、発生確率は、地震の規模とともに関心が高いデータだ。政府の地震調査研究推進本部によれば、新庄盆地断層帯の今後30年以内の発生確率は東部が5%以下、西部が0.6%と推定されている。実はこの二つ、全く異なる計算式で算出されている。東部は「BPT分布」、西部は「ポアソン過程」。
BPT分布は、時間の経過によって危険度が高まる地震の発生確率を表現する上で適切なモデルとされ、推進本部の長期評価では優先的に採用される。一方のポアソン過程は、発生確率は時間の経過に左右されないと仮定して推計するモデル。どんなに時がたっても一定の数字となるため、推進本部は「活動間隔の統計量を良好には表現していない」と指摘している。
やむを得ず
それでは、なぜ全ての長期評価でBPT分布を採用しないのか? 「ポアソン過程は平均活動間隔が分かれば算出できるが、BPT分布は最新活動時期というもう一つのデータが必要。活断層の調査では、最新活動時期が不明で、やむを得ず『ポアソン』を適用するケースもある」。推進本部の事務局を務める文科省地震・防災研究課企画官の矢来博司はそう解説する。
推進本部が2005年にまとめた資料によると、地震発生確率を算出した全国の主要断層帯のうち、BPT分布を適用できたのは83%。残る17%はデータ不足で、ポアソン過程を適用せざるを得なかった。
推進本部の長期評価では、新庄盆地断層帯東部の平均活動間隔を4千年程度、最新活動時期を6200年前以後と推定。この二つのデータから今後30年以内の発生確率を「5%以下」と導き出した。しかし、西部は、東部に比べ調査・研究の蓄積が少ない。平均活動間隔を4700年程度としたものの、最新活動時期は特定できなかったため、ポアソン過程で将来の地震発生確率を求めた。
長期評価では「ポアソン過程を用いた場合、地震発生の確率はいつの時点でも同じ値となり、本来時間とともに変化する確率の『平均的なもの』になっていることに注意する必要がある」と記した。信頼度は4段階ある中で最も低い「d」ランク。とはいえ、発生確率を目に見える形で示すことは、地震防災を考える上で参考になる。
確率5割超
地震調査委員会事務局は01年公表の「長期的な地震発生確率についての解説」という資料の中で、興味深いデータを示している。活断層による地震発生の周期は極めて長いため、個々の30年発生確率は最大でも16%(神縄・国府津-松田断層帯=静岡・神奈川県)だが、主要98断層帯(現在は110)のうち、上位25までの断層帯いずれかで30年以内に大地震が発生する確率は「53%を超える」とした。
全国の長期評価結果一覧では、新庄盆地断層帯東部の発生確率は上から数えて15番目。つまり「5割超」のグループに入っている。=敬称略
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