最上川が大きく蛇行する村山市長島の西方約1キロ。出羽山地の一角に、かつて大地震が起きてずれたと考えられている活断層がある。元山形大教授の阿子島功(68)らは、この断層を「大高根断層」と名付けた。
列島の形影響
国土地理院の都市圏活断層「村山」では、「地形的な特徴から活断層と推定されるが、現時点では明確に特定できないか、今後も繰り返し活動するか不明なもの」と分類、推定活断層として黒い破線が引かれている。「段差がもう一つはっきりしないということで『推定』とされたようだが、大高根断層の北端で、大きな地震によってずれたとみられる地層を確認しており、活断層と断定できる」と阿子島は語る。
大高根断層は「横ずれ断層」の特徴を持つ。断層運動には岩盤が上下に動く「正断層」「逆断層」と、水平方向に動く「横ずれ断層」という三つのパターンがあるが、東北日本は大半が逆断層、西南日本は横ずれ断層が多い。その理由は、逆「く」の字型になっている日本列島の形状で説明される。
「活断層とは何か」(東京大学出版会)などによれば、列島は全体として東西から圧縮されていると考えられている。東北日本は南北方向に山脈が走り、圧縮力が地質構造と直交。ところが、西南日本はおおむね東北東-西南西方向の地質構造で、圧縮力と斜交している。このため、力をまともに受ける東北日本では逆断層、力が斜めにかかる西南日本では横ずれ断層が発達しやすいという。
実際、本県の活断層の大半は逆断層タイプ。「横ずれ」が確認されているのは県内で唯一、大高根断層だけだ。「ただし、山形盆地断層帯は基本的に西側が隆起する逆断層地形。たくさんある割れ目の一つがたまたま横ずれを起こしたにすぎない」と阿子島。
道路工事で現れた大高根断層の露頭。現在は見ることができない(阿子島功氏提供)
のり面に露頭
阿子島によると、発見したのは当時、東京大の大学院生だった鈴木康弘(現名古屋大教授)。「1986年春ごろ、新庄や山形の活断層を調査していた鈴木さんから連絡があり、一緒に見に行ったところ、道路工事中ののり面で地層が切れている活断層露頭を確認した」(阿子島)
のり面には二つの亀裂があった。阿子島らは地表から4番目の層にあったミズナラの埋もれ木の年代を測定、約1万年前のものであることが分かった。また、3番目の層は尾花沢軽石でできた層で、肘折温泉が1万年ほど前に大噴火を起こした際に飛んだ火山灰層と判明。いずれの層でも亀裂が確認でき、さらに上の層にも亀裂が走っていたが、この地層の年代は不明なことから、阿子島らは大地震が起きた時期は1万年前「以降」と結論付けた。
道路工事で現れた大高根断層の活断層露頭は、その後のり面が整備され、現在は見ることができない。=敬称略
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