NIBフロントライン

ヤマコン社長
佐藤隆彦氏
佐藤隆彦氏
【インタビュー】
 -業界の現状や自社の取り組みは。

 今年で創業52年。10年ほど前はリーマンショックや政権交代で建設業への風当たりが強かったが、東日本大震災や毎年のように起きる天災もあり、近年は期待と評価の高まりを感じている。当社の事業の約8割はコンクリート圧送業で、残りがリフォームや太陽光発電、不動産賃貸という構成。コンクリート圧送業は忙しさが増しており、東京五輪の対応で関東の支店の仕事が伸びている。社長に就いた際、「企業に参加する全ての人は、幸せでなければならない」との企業理念を掲げた。顧客満足度を高めるために、社員の技術と技能を向上させ、最新設備を導入してきた。一方で社員の満足度も重視しており、その一環で、大規模災害に備えた事業継続の取り組みに積極的な企業・団体に与えられるレジリエンス認証を取得した。福利厚生に力を入れ、健康経営優良法人も目指している。

 -会社が求めている人材と、育成の考え方は。

 「自主・自発・自律」だ。自ら進んで動き、会社を代表して発信し、コンプライアンスをきちんと守れる人物が理想。当社の仕事は1人から4人の小編成で行うため、一人一人がヤマコンの看板を背負って業務に当たってほしいと期待している。新卒の採用は数年前から厳しい状況が続いている。本年度は技術系が新規2人と中途1人、事務系は新規2人。若い退職自衛官も採っている。社員教育の基本はOJT(実務を通じた訓練)。新入社員は半年は本社扱いにして、適性を見て配属を決める。定着率は全社で新卒8割、中途6割と高い。今後、コンスタントな採用につなげるためにも、会社の魅力を高め、知ってもらう努力がさらに必要だと考えている。

 -仕事上で影響を受けた人物は。

 ゼネコン勤務時代に出会った監督からは、仕事との向き合い方を教わった。工期、工程、品質への姿勢はすごいものがあった。コンクリート圧送業という産業を事実上創り上げた父の勝彦会長も尊敬している。創業精神を継承しながら、時代に合わせた経営をしていきたい。ほかにニトリホールディングスの似鳥昭雄会長、「脱カリスマの経営」の著書で知られる吉田忠裕YKK前会長の影響を受けた。

 ★佐藤隆彦氏(さとう・たかひこ) 東北大経済学部を卒業後、清水建設入社。1995年にヤマコンに入り、常務、代表取締役専務を経て2005年から現職。全国コンクリート圧送事業団体連合会常務理事、東北生コン圧送連合会長、県コンクリート圧送協会長を務める。山形市出身。54歳。

 ★ヤマコン 1966(昭和41)年、山形コンクリートサービスとして山形市幸町に設立。79年に同市穂積に本社を移し、95年にはグループ3社を統合しヤマコンに社名を変更。2011年に立谷川工業団地の現在地に移転した。コンクリート圧送業界最大手で、水道管更生工事や空調ダクトクリーン工事なども手掛ける。同社所有のコンクリートポンプ車は映画「シン・ゴジラ」に登場した。資本金9千万円。従業員数は198人(グループ全体で230人)。県内と宮城、福島、関東に支店など14の拠点を構える。本社所在地は山形市十文字天神東770。

【私と新聞】気になる記事、社内で回覧
 佐藤隆彦社長は毎朝、自宅で山形新聞を、会社で経済紙、業界紙、ブロック紙に目を通す。15年ほど前からは自分の目線で伝えたい情報を抜粋し、コピーして「ヤマコンニュース」と題して社内で回覧している。業界の話題だけでなく、働き方改革などもピックアップする。「社長が今、世の中の何を気にしているかを社員に感じ取ってもらいたい」との思いがある。

 山形新聞については、地域情報がきめ細かく網羅されている点を評価する。特に経済面は欠かさず読んでいる。「経営者と顔を合わせることがあっても、その企業がどのようなことをしているかを話す機会は多くない。紙面で各社の取り組みを具体的に知り、触発されることが多い」と語る。

【週刊経済ワード】公的医療保険制度
 自営業者らが入る国民健康保険、中小企業の社員が入る全国健康保険協会(協会けんぽ)、大企業社員が中心の健康保険組合、公務員らの共済組合の四つに大別される。国民は「皆保険」の下で何らかの公的医療保険制度に加入しており、保険が適用される治療は自己負担が一部で済む。75歳以上の人は全員「後期高齢者医療制度」に移り、保険料や患者の窓口負担(原則1割)に加え、現役世代からの支援金と国・自治体の公費で支える仕組みになっている。
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