NIBフロントライン

山形信用金庫理事長
山口盛雄氏
山口盛雄氏
【インタビュー】
 -業界の現状を踏まえ、求めている人材は。

 「信用金庫はエリアが限定された金融機関であり、地域とのつながりが強い。現在はただ預金を集め、融資するだけではない時代になっている。地元企業の課題を解決し、地域全体の繁栄につなげていくことが重要な役割だと捉えている。当金庫は来年70周年を迎える。これまでの歴史を踏まえながらも、新たな時代に向けた取り組みが必要だと考えている。不易流行を意識しながら常に問題意識を持ち、改革する努力を惜しまず、失敗を恐れず、果敢にチャレンジする人材を求めている」

 -具体的に必要な能力、人材育成の取り組みは。

 「お客さまに対し『フェース・トゥ・フェース』『双方向型・対面型』の営業スタイルを重視している。まずはお客さまの話を聞き、内容を正確に把握する力が重要になる。さらに決算書を読み解くだけでなく、数字には現れない企業の特色を把握し、改善点を提案するような目利き力も大事。内部での研修だけでなく、信用金庫の県、東北、全国組織の研修会にも職員を派遣し、ネットワークづくりにもつなげてもらっている。もちろん、自己啓発も大切。専門分野だけでなく、世界や国内情勢の知識も深め、幅広く地元の経営者の相談に応じられる職員になってほしい」

 -自らが仕事上で最も影響を受けた人物は。

 「元城南信用金庫理事長で全国信用金庫協会長などを務めた故小原哲五郎氏だ。特に三つの言葉を大切にしている。一つ目は事業主にとって本当に生きた融資になるのかを考えさせられる『貸すも親切、貸さぬも親切』。二つ目は日本の大部分を占める中小企業を支えるため、小口融資に徹するとの教え『裾野金融』、三つ目は真面目に一生懸命に泥まみれで頑張っている人に融資する『人柄に貸す』という言葉だ。いずれも協同組織金融の設立趣旨、理念に深く関わっている。競争が激しさを増し、時代が変わったとしても、信用金庫としてのスタンスは変えてはいけないと思っている」

 ★山口盛雄氏(やまぐち・もりお) 山形商業高を卒業後、1970(昭和45)年に山形信用金庫に入庫した。常勤監事や常務理事、専務理事などを経て2012年から理事長。16年からは県信用金庫協会長も務める。山形市出身。65歳。

 ★山形信用金庫 1949(昭和24)年に山形市信用組合として設立。52年に山形信用金庫に改組し、2009年に山形庶民信用組合と合併した。営業エリアは山形、寒河江、天童、上山、東根、村山、南陽、中山、山辺、河北、大江、西川、朝日の7市6町で計14店舗を持つ。役職員数は昨年3月末現在で158人。本部は山形市鉄砲町2の18の5。

【私と新聞】文章力、読解力身に付く
 山口盛雄理事長は新聞について、広範囲な情報が得られるだけでなく、活字を読むことで文章力や読解力が身に付くことも大きなメリットだと感じている。「企業情報に関する資料の読み取りや、提案文書の作成に役立つ。新入職員に対しては新聞を読むよう口やかましく言っている」と強調する。企業訪問で面談する学生に対しても新聞の重要性を伝えているという。

 地元の情報を知ることも大切な要素で、山形新聞については「地域の動きが網羅されており、お客さまとのコミュニケーションを図るのに必須のアイテム」とする。お客さま会の会合のあいさつで、県内経済の現況を紹介する資料としても活用している。出張時にはスマートフォンを利用し、山形新聞の読者限定電子版「やましんe聞」で県内ニュースを確認し、地元の日々の動きを欠かさずチェックしている。

【週刊経済ワード】国内総生産(GDP)
 国内で一定期間につくられたモノやサービスの付加価値の合計額。国の経済規模を表す。増減率は「経済成長率」と呼ばれ、景気動向を把握する指標として重視される。個人消費や企業の設備投資、公共投資などの内需と、輸出から輸入を差し引いた外需で構成される。そのまま計算する名目値と、物価変動の影響を除いた実質値がある。
[PR]