社説

黒田日銀総裁再任へ 緩和策の効果、見極めよ

 黒田東彦日銀総裁の再任が確実になった。物価上昇率2%を目指す大規模な金融緩和政策は継続するのだろう。任期の5年を超えて務めるのは異例だが、デフレ脱却を目指す金融政策は胸突き八丁に差し掛かっている。トップ交代による混乱は好ましくないのは確かだ。

 総裁人事が国会承認され、次の任期の2023年まで務めれば在任期間は歴代最長の一万田尚登氏(1946~54年)を超える。在任5年超えは山際正道氏(56~64年)以来、半世紀ぶりとなる。

 ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授は、黒田氏再任の流れを高く評価する。安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」の「三本の矢」で最も成功したのが、黒田氏が主導した大規模な金融緩和とスティグリッツ氏は指摘。「黒田氏は世界の中央銀行の総裁で最も思慮に富み、最高のエコノミストの一人だ」とまで語る。

 ただし、評価の一方で黒田氏が課題を抱えているのも事実だ。物価上昇率2%目標は達成が見通せないままだ。黒田氏が総裁に就任した2013年に、2年間で達成すると公約した上昇率2%達成はその後、6回も延期された。17年12月の上昇率は0.9%と目標の半分弱。副作用も目立ってきた。政策目標の根幹は維持しつつも、一定の調整はあり得るのではないか。目標をそのまま掲げ続けるのがいいのか、これまでの政策効果や世界経済の現状なども踏まえ検証してみてもいいだろう。

 世界経済の安定を脅かしているのは米国のインフレ圧力だ。長期金利が急上昇、株価が急落するなど不安定な動きが続いている。米国は大規模減税に加え巨額のインフラ投資も実施する。この資金繰りのため国債が増発される一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融緩和策の出口に向け国債買い入れを減らしている。国債消化が滞れば金利が跳ね上がる恐れもある。

 08年のリーマン・ショック以降に日米欧の中央銀行が行った金融緩和による低金利下で、インフレを起こすほど過熱せず、不況に陥るほど冷え込みもしない「適温経済」が続いてきた。この適温経済の終了を予想する専門家は多い。足元では円高も加速。米国が利上げを加速するとの観測から投資家が「安全資産」とされる円に資金を移動している。輸出企業の採算が悪化するとの見方から株価も下降傾向をたどり始めた。

 このような情勢では、本来日銀は景気減速に備え利下げなどの政策手段を確保すべきだが、金融緩和の拡大を続けてきたため残された手段はほとんどない。

 超低金利の長期化は地方にも無関係ではない。貸し出し利ざやが縮小した地方銀行に影響が及んでいる。ただでさえ人口減少が進む状況の中で、地域経済の疲弊は避けなければならない。

 黒田氏は金融緩和策を終了する「出口」については「時期尚早」と繰り返す。しかし米欧の金融政策が正常化に向かう中、日本だけが緩和を続ければ、市場のひずみは大きくなる。国際的な動向を見極めた上で細心の注意を払った政策運営を求めたい。説明責任を果たし、市場との丁寧な対話を心がけてほしい。

(2018/02/17付)
最新7日分を掲載します。
  • 2月17日
  • 黒田日銀総裁再任へ 緩和策の効果、見極めよ

     黒田東彦日銀総裁の再任が確実になった。物価上昇率2%を目指す大規模な金融緩和政策は継続するのだろう。任期の5年を超えて務めるのは異例だが、デフレ脱却を目指す金融政策は胸突き八丁に差し掛かっている。トップ交代による混乱は好ましくないのは確かだ。[全文を読む]

  • 2月16日
  • 高校の新指導要領 現場に裁量与え支援を

     高校の学習指導要領改定案を文部科学省が公表した。改定はほぼ10年に1度で2022年度から実施される。「知識の理解の質をさらに高め、確かな学力を育成する」というが、盛りだくさんな履修内容に生徒が付いていけるのか。授業の準備時間が足りないと嘆く教員は「働き方改革」で勤務時間が減っても対応できるのか。不安も見え隠れする。[全文を読む]

  • 2月15日
  • 五輪壮行会、PV規制 東京の盛り上げに逆行

     巨額の契約金を払った公式スポンサーの権利保護を優先するあまり、五輪関連イベントに対する市民のアクセスが制限される事態が発生するのは、本末転倒であろう。日本人選手が現在メダル獲得を重ねている平昌冬季五輪だけでなく、2年後に日本で開催される東京五輪の盛り上げにも水を差しかねない。[全文を読む]

  • 2月14日
  • 森友問題、相次ぎ新文書 国民の前で語るべきだ

     大阪市の学校法人「森友学園」を巡る問題で、関連する新たな文書や音声データが相次いで見つかっている。国有地を8億円余りも値引きして売却した不透明な経緯が取り沙汰されているが、疑惑はさらに深まっている。[全文を読む]

  • 2月13日
  • 長井・庁舎移転案否決 望みたい建設的な議論

     長井市議会は5日の臨時会で、市役所庁舎の位置を現在地からフラワー長井線長井駅前に移転するための条例改正案を否決した。議論を聞く限り、庁舎建設の必要性に異論はなく、市民への説明不足、財政への不安が主な反対理由にみえた。市は各地区で住民説明会を開いた上で、3月議会に再提案する方針を示している。多くの市民の理解を得て仕切り直し、新庁舎建設に臨んでほしい。[全文を読む]

  • 2月12日
  • いなほ、上越新幹線同一ホーム化 庄内への誘客促す好機

     JR新潟駅で4月15日、上越新幹線と在来線の同一ホームでの運行が始まる。庄内を走る羽越本線特急いなほの乗り継ぎ利用者は、同じホームから上越新幹線の乗降が可能になる。乗り換え時の移動負担が大幅に軽減され、庄内と首都圏を結ぶ在来特急と新幹線がつながっているという印象が強まる点で、観光客などに与えるプラス効果は大きい。[全文を読む]

  • 2月10日
  • 世界株安連鎖 不測の事態に備え必要

     米ニューヨーク市場の株価急落をきっかけに、世界の金融市場に動揺が広がっている。乱高下する株価が米国経済の変調につながれば、世界経済全体に大きな負の影響を与える。米景気の動向を注視し不測の事態に備える必要がある。[全文を読む]

文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大

県内7市発行メールマガジン登録無料

ふるさとだより

週1回配信中!

ニュース特集

スポーツ

教育・子育て

おでかけ

暮らし情報

twitter発信中

山形新聞からお知らせ

  1. 【2018年8大事業】
     山形新聞、山形放送の2018年の8大事業が決まりました。詳しくは、こちらから
  2. 【やましん公式FB】
     山形新聞社は、インターネット交流サイト「フェイスブック(FB)」の公式ページを新設しました。
     公式ページでは山形新聞のニュースのほか、本社からのお知らせなどを中心に紹介します。
     アドレスは、こちらから
  3. 【やましんe聞で動画視聴】
     読者限定の電子版「やましんe聞」で動画を閲覧できる新サービスを始めました。詳しくは、こちらから。
  4. ◆中学、高校の各種スポーツ大会の記録を紹介。検索機能も備えています。アクセス方法はこちら
  5. ◆探したい記事がきっと見つかる、山形新聞記事データベース。他社DB横断検索が便利な日経テレコンジー・サーチファクティバ
  6. ◆県外でも今日の朝刊が朝一で読める「お届け電子版
  7. ◆ニュース速報、高校野球、モンテ情報、おくやみ… 身近な情報を携帯で確認「モバイルやましん
  8. ◆故郷の話題をメールでお届け、ふるさとメール会員募集(登録無料)
山形新聞から
販売から