社説

「ニュース女子」放送倫理違反 「事実を伝える」が基本だ

 沖縄県の基地反対運動を扱った東京MXテレビの1月2日の番組「ニュース女子」について、放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送倫理検証委員会(川端和治委員長)は、放送の核となる事実に十分な裏付けがなかったと判断した上で「重大な放送倫理違反があった」とする意見を発表した。事実を伝えるという根幹をなおざりにした由々しき事態である。

 「沖縄緊急調査 マスコミが報道しない真実」と題した番組では、沖縄の米軍北部訓練場のヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設工事に反対する運動の参加者を「テロリストみたい」などと表現し、反対派による救急車の運行妨害があったとも紹介した。ところが検証委が地元消防本部などで調査した結果、運行妨害の事実はなかった。さらに番組で、反対派が日当を受け取っているかのように伝えていた点にも裏付けはなかった。

 審議対象の番組は外部の制作会社が制作し、キー局の系列に属さない東京ローカル局のMXが放送した“持ち込み番組”だった。検証委は、MXが放送前に番組をチェックする際に「抗議活動を行う側に対する取材の欠如を問題としなかった」「放送内容の裏付けを制作会社に確認しなかった」点などを問題視した。

 放送法は意見が対立する問題についてできるだけ多くの角度から論点を明らかにするよう求めているが、番組には反対運動参加者側の主張はない。このことについて、制作会社は「犯罪や不法行為を行っている集団を内包し、容認している基地反対派の言い分を聞く必要はない」との立場を取っていた。ならば放送局側は、そのような番組を流すことが適切なのかどうか、社内考査の段階で吟味しなければならなかった。「考査には放送の自主・自律や、多メディア社会における放送の誇りを守るとりでの役割がある」と検証委は指摘する。事実、この番組についてはMX以外の地方局が、考査を通して「バランスを欠いており放送できない」と判断していた。MXのチェック態勢の甘さは明らかだ。

 「ニュース女子」は、ベテランの男性評論家らが若い女性タレントらにニュースを解説する形式の番組。MXが2015年10月から放送している。

 検証委は、今回の審議結果をまとめた意見の末尾に、こう記している。

 「『(真実を軽視する)ポスト・トゥルース』という言葉がまかり通る時代に、放送が言論・表現の自由を貫くには放送倫理の根本に立ち返り、発信する情報の質を常に検証することが必要。放送人には放送倫理を守り、とりでを強固なものにする不断の努力を求めたい」

 報道する側がこのようなファクトチェックを尽くさなければならないのは当然だ。一方で、厳正な検証が報道全般を萎縮させる方向には流れないように常に留意することも、同様に重要となる。

 検証委の川端委員長は今年3月、選挙など政治に関し「表現の自由を最大限に利用し、番組を作るのが放送人の使命」と述べ、現場が萎縮しないようにも求めている。民主主義に基づいて社会を健全に維持していくためにさまざまな意見を取材し提供することは、放送人に限らず報道に携わる人間の使命である。

(2017/12/16付)
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