社説

鶴岡のサイエンスパーク 地域主導でまちづくり

 慶応大先端生命科学研究所を核に、独創的なバイオベンチャー企業が集積する鶴岡市のサイエンスパークで、新しいスタイルのまちづくりが進展している。宿泊や滞在、交流の機能を備えた新しい形のホテルや、季節を問わず伸び伸びと遊び、学ぶことができる子育て支援施設の建設工事が進み、両施設が完成する来年には「街開き」が行われる予定だ。

 行政から引き継いでこれらの開発事業を手掛ける民間企業の「YAMAGATA DESIGN(ヤマガタデザイン)」は、この施設を整備する意義について「人が集まる場と仕組みを整えること」とし、よそからの資本に頼らず、地元経済界からの投融資によって地域自らが意思決定できる「完全地域主導」のまちづくりを志向している。同社の挑戦を、地方創生の実現に向けた庄内発の先導的事例として結実させたい。

 宿泊滞在複合施設「SHONAI HOTEL SUIDEN TERRASSE(ショウナイ・ホテル・スイデン・テラス)」は、交流を生み出す拠点としての機能を強く打ち出している点が特徴。バイオ産業の集積に伴い、鶴岡を訪れる研究者やビジネス客などが増える中で、宿泊先が確保しにくいという声があるという。これらの需要に応じ、今後増加が見込まれる訪日外国人や庄内を訪れる観光客などの旅行者に対しても良質な滞在空間を提供する。周辺の田園風景と調和する木造低層の建物で、交流する場となる共用棟を客室棟が囲む形で構成されている。建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受けた建築家坂茂氏がデザインと設計を手掛けた。

 隣接地では、同じく坂氏が設計を手掛けた子育て支援施設「KIDS DOME SORAI(キッズ・ドーム・ソライ)」が今年8月に着工した。地元の子育て世代の間では「冬場も子どもを伸び伸びと遊ばせることができる場所がほしい」という要望が根強い。降雪期には子どもを遊ばせる場を求めて、内陸地方の遊戯施設に連れていく家庭もあるという。ソライは、県産木材を使ったドーム形の屋根が特徴的な施設。「遊び」に加え、サイエンスパークの研究者や地域の専門家などを先生にした科学イベントや体験教室などを開き、「学び」の機能も強化する。加えて孤立化が懸念される子育て世代の「出会い」「交流」を促す仕掛けも検討している。

 ヤマガタデザインは、これらの事業に加えてサイエンスパークから約3キロ北西の田園地帯に農村カフェ「IRODORI(イロドリ)」をオープンさせた。今後は、若者のUターンを促すため庄内出身者を対象とした求人情報サイト「SAKURAMASU(サクラマス)」の開設に向けて動きだす一方、農業分野への進出など多様な事業展開を視野に入れている。

 サイエンスパークを核とした庄内を舞台に、多様な人々が交流する新しいまちの創造を目指すヤマガタデザインの挑戦には、新鮮なエネルギーが脈打っている。人口減少が進む地方都市の課題に対し、全く新しい手法でアプローチし、未来を切り開こうとしているこのプロジェクトに期待したい。

(2017/12/04付)
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