社説

APEC首脳宣言を断念 多国間協議重視を貫け

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)は米中の対立激化で首脳宣言を断念した。多国間協議による貿易・投資の自由化を目指す枠組みが機能不全に陥り、世界経済への影響は極めて大きい。各国にとって、米中両国に対し、歩み寄りを働きかけることは重要だが、同時に、早期の対立解消は見込めない現実を直視した政策も検討する時期だろう。

 世界1位、2位の経済大国である米中両国は、世界経済の安定に向けた責任を自覚すべきだが、報復関税措置を発動し合う「貿易戦争」は激化の一途だ。10月にペンス米副大統領が行った演説は、通商、安全保障両面で中国への敵意をむき出しにし、米国が対中政策を一段と硬化させる意図を明確にしたと注目された。

 ペンス氏はAPECでも、外資規制や技術移転の強要などを挙げて中国を強く批判。中国の習近平国家主席は保護主義と一国主義が台頭していると強調し、米国を非難した。11月末にアルゼンチンで予定されている米中首脳会談で、その角逐が沈静化に向かうとは考えにくい。

 こうした状況の中でも、各国は多国間協議重視の姿勢を貫き、公正・公平で自由な貿易体制の構築を目指すべきだ。米中という経済大国を欠くため、規模も効果も限定的にならざるを得ないが、大国が力を背景にした2国間交渉を推し進めることを許せば、貿易は縮小し企業活動も萎縮を余儀なくされる恐れがある。

 日本に関して言えば、取りまとめを主導した環太平洋連携協定(TPP)が12月30日に発効する。また、欧州連合(EU)との間で合意した経済連携協定(EPA)も来年2月に発効する見込みだ。この枠組みを活用して参加各国の共栄を図っていきたい。

 特にTPPでは、新たな参加国を迎え入れて規模を拡大し、そのメリットを広く享受できるようにしたい。中国も参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)は年内妥結を断念したが、交渉を加速させ来年には結実させたい。

 回り道かもしれないが、国際協調を背景にした公正・公平なルールに基づく自由貿易が健全な経済発展につながり、各国が恩恵を受ける姿がより明確になれば、米中といえども、無視はできないはずだ。その意味で、中国も入るRCEPの成否が非常に重要になる。

 日本にとって当面の試練は年明けからの米国との通商交渉だ。日本は、交渉対象は物品の関税などに限るとの立場から物品貿易協定(TAG)と名付けたが、実態は対象が物品だけにとどまらず、経済活動の制度などまで広く扱う自由貿易協定(FTA)と見る専門家が多い。

 事実、ペンス氏も物品に限定しないと明言し、ムニューシン米財務長官も通貨切り下げを防ぐ「為替条項」の導入に言及した。日本の対米輸出を有利にしている円安を問題視し、交渉で取り上げる意向だ。対米輸出自動車の数量制限も取り沙汰されている。

 日本政府が米国のこうした要求に屈すれば、国民を裏切ることになる。国際社会でも、安倍晋三首相の「日本は自由貿易の旗手」との決意は看板倒れになったと見られ、TPPを主導した実績に傷が付き、各国からの信頼も失いかねない。

(2018/11/20付)
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