社説

学校給食無償化の動き 自治体任せでいいのか

 県内自治体で子育て支援の観点から学校給食を無償化する動きが出始めた。少子高齢化や人口減少への対応が急務となっている中、定住促進の狙いもあろう。多子・低所得世帯への援助とは異なり対象が広く、財源確保や住民の理解など導入には課題も多いことから無償化に慎重な自治体もあるが、今後、特に若い世代からの要望が高まるだろう。

 2017年度から他市町村に先駆けて小中学校の給食完全無償化に踏み切るのは鮭川村。鮭川小と鮭川中の2校に通学する約270人が対象で、約1850万円を予算化した。寒河江市は小学校の給食を17年度から4年間で段階的に無償化する。対象は10校の約1940人で初年度は半額にする。第3子以降の全額無料分を合わせ約7千万円の事業費を見込む。大江町は小学6年生と中学3年生に限定して無償化する。対象者は計約130人で、約680万円を確保した。小学6年生と中学3年生を対象にした理由を町教委は「制服の購入や受験を控えた子どもへの教育費で出費が増える時期の負担緩和を図りたい」としている。

 若い世帯が居住地を決める場合、子育て支援策の充実度合いが重要な選択基準になる。医療費補助や住宅支援、育児相談体制の整備など既存の施策に給食無償化を加えるよう、会派単位で提言している地方議会もある。複数自治体の3月定例会で無償化が議論されたが、首長らの見解は分かれた。無償化すれば基本的に後戻りはできず、実施には恒久的な財源の裏付けが必要だ。自治体によってはふるさと納税制度による寄付が増えているとはいえ、過剰な返礼品などが問題視され制度の見直しが予定されている。ブームがいつまで続くか分からない。厳しい財政事情の中で無償化に二の足を踏むのも無理はない。前述の3市町村は既存事業の見直しなどで継続実施の見通しを付けた。

 給食無償化は子どもの医療費無償化の課題と通じる。現在、すべての自治体で何らかの医療費減免措置が取られており、子育て支援を名目に、競って助成対象範囲を拡大する傾向にある。厚生労働省の子どもの医療制度の在り方等に関する検討会では地方自治体単独事業としての負担減免に賛否が分かれ、ナショナルミニマム(国民生活の最低保障)の観点から、国の制度設計に基づき実施されるべきであるとの指摘もなされた。

 16年3月に開かれた内閣府の経済財政諮問会議では、民間議員が、子育て支援の柱として学校給食の無料化を提言し、家計で使える所得の拡大や女性の出産・就労支援を通じて経済の好循環を生み出すよう求めた。人口減少対策が国家的課題となっている時代にふさわしい学校給食の在りようを、各自治体の判断に委ねるのは果たして適当か。

 県町村会長を務める遠藤直幸山辺町長は3月定例会で「医療費は中学3年生まで無料にしている。給食費を町が負担するのは難しい。教育の一部として国費で賄うべきだと考える」と答弁した。学校給食は1889(明治22)年に鶴岡市の大督寺に開設された私立忠愛小で昼食を提供したのが起源。発祥の地の本県から国民レベルの議論を起こしたい。

(2017/03/25付)
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