社説

皇位安定を巡る議論 特例法が終点ではない

 「皇室典範改正(による制度化)が本来の姿だが、短期間にやるには、これしかない」

 天皇陛下の退位を巡る有識者会議座長代理を務めた御厨貴東大名誉教授の言葉が、本質を端的に伝えている。

 政府が「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案」の骨子をまとめた。法案要綱の作成を急ぎ、5月の大型連休明けに国会各党派代表者による全体会合で示す予定。5月19日にも閣議決定し、今国会で成立させたい意向だ。

 83歳という陛下の年齢を考えれば、まずは一代限りの特例法制定に向かうのは致し方ない面がある。しかし、特例法が成立すればそれで終わりではない。皇族の減少は近い将来、安定的な皇位継承にとって不安材料になる。皇室典範改正を軸に、女性宮家の創設、旧宮家(旧皇族)の男系男子の処遇などを論議していく必要がある。退位を巡って国民の皇室への関心が高まっている今がその好機だ。「国民の熱が冷めないうちに駒を進める必要がある」と御厨氏が指摘する通りである。

 骨子がまとまるまで曲折をたどったとはいえ、最終的には衆参両院の正副議長が3月にまとめた国会見解をほぼ踏襲した。退位後の天皇陛下の呼称は「上皇」、皇后さまは「上皇后」となる。天皇誕生日は12月23日から、皇太子さまが生まれた2月23日に改める。宮内庁内に新たな部署「上皇職」を設け、トップの「上皇侍従長」以下の職員を置く。「皇嗣(こうし)」となる秋篠宮さまを支える「皇嗣職」も新設する。特例法の根拠として「皇室典範の特例として天皇の退位について定める特例法は、典範と一体を成す」旨の規定を典範付則に置く。

 昨年8月、陛下が国民に向けたビデオメッセージで退位の実現に強い思いを示され、世論の9割近くが容認の意向を示したことから、議論が本格的に動きだした。そのメッセージの中に、こんな言葉がある。

 「天皇が象徴であると共に、国民統合の象徴としての役割を果たすためには、天皇が国民に、天皇という象徴の立場への理解を求めると共に、天皇もまた、自らのありように深く心し、国民に対する理解を深め、常に国民と共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じて来ました」「国民を思い、国民のために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした」

 「国民と共にある」「信頼と敬愛」のキーワードは、その70年前に父の昭和天皇が発した「人間宣言」に呼応している。宣言はこう述べる。天皇は「国民ト共ニ在リ」、天皇と国民の関係は「終始相互ノ信頼ト敬愛トニ依(よ)リテ結バレ、単ナル神話ト伝説トニ依リテ生ゼルモノニ非(あら)ズ」。

 昨年のメッセージはいわば「平成の人間宣言」といえる。ところが、有識者会議で意見表明した専門家の中には「天皇は伊勢神宮にまつられた神々を皇室の祖神とあおぐ大祭司で、神道の文化的伝統の継承者」(平川祐弘東大名誉教授)など、戦前の神話的天皇観を前面に打ち出す例もあった。皇位継承の安定化を巡るこれからの議論では、人間としての皇族という視点をきちんと保つべきだろう。

(2017/04/28付)
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