社説

衆院選・働き方改革 踏み込んだ議論求める

 衆院選で与野党は、いずれも雇用・労働政策に関して、長時間労働や賃金格差の是正を公約に掲げている。だが、安倍政権が進める働き方改革の具体的な施策となると、与野党が鋭く対立している。働き方改革が働き過ぎの抑制につながるか、むしろ助長する恐れはないのか―。各党の主張を十分に吟味したい。

 政府が成立を目指す労働基準法改正案など働き方改革関連法案の柱は、(1)長時間労働の是正(2)同一労働同一賃金の実現(3)一部の専門職の労働時間規制を緩和する「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)の導入(4)裁量労働制の拡大―である。関連法案は臨時国会で審議予定だったものの、衆院の冒頭解散で先送りされた格好だ。衆院選後の国会で仕切り直されれば大きなテーマとなるはずだが、選挙戦での注目度は高くなく、論戦もやや盛り上がりを欠いている。

 働き方改革の主眼である労働時間の短縮では、与野党が足並みをそろえた。自民、公明両党が公約で「長時間労働の是正」をうたうほか、希望の党、立憲民主党、共産党、社民党など野党も、同様の主張を前面に打ち出す。

 ただし、働き方改革関連法案が残業時間の上限を繁忙期に限り特例として「月100時間未満」などと定める点については、共産、社民が「過労死ライン」の長時間労働を容認しているとして厳しく批判している。この上限時間は国会審議でも焦点になるとみられ、政府は疑念に応え丁寧に説明する責任がある。

 パートや派遣労働者など非正規労働者と正社員の賃金格差是正を目指す「同一労働同一賃金」も、与野党がそろって公約に盛り込んだ。また関連して「最低賃金の引き上げ」を訴える党も多い。重要なのは、同一労働同一賃金を実現するための具体的な手だてだろう。国会の審議では踏み込んだ議論を求めたい。

 一方、関連法案の中で最も反発が強い「高プロ」導入について、推進する立場にある自民、公明が公約に明記していないことは大きな問題だ。両党は長時間労働を是正するための規制強化はアピールしていながら、労働者に不利になる可能性のある規制緩和は表に出していないことになる。「争点隠し」と言われても仕方ないだろう。

 年収1075万円以上の金融ディーラーや研究開発などの専門職を労働時間の規制から外し、残業代を払わない高プロについて、共産や社民は「残業代ゼロ法案だ」として明確に反対する。立憲民主も公約では触れていないものの、枝野幸男代表が「残業代を払わないむちゃくちゃな法案だ」と批判している。

 高プロは企業に課す健康管理などの義務が緩い上に、制度導入後に年収要件が引き下げられれば対象範囲が広がる懸念も否定できない。高プロと残業時間の上限規制という全く性格の異なる制度が、労基法改正案に一括して盛り込まれているのも疑問だ。二つは改めて切り離して法制化を提案すべきではないか。

 働き方改革は労働者の暮らしと健康に大きな影響を与える。進め方には慎重を期し、衆院選後も十分に時間をかけて議論を重ねるべきだ。関連法案の大幅な手直しも、ためらってはならない。

(2017/10/21付)
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