社説

子どもの貧困対策 負の連鎖を断ち切って

 本県で初めて策定された「県子どもの貧困対策推進計画」は、2016年度が5カ年計画の初年度。山形市内で今月、公益財団法人「あすのば」(東京)と県が共催する「子どもの貧困対策全国キャラバンin山形」が開かれ、支援団体の代表者らから支援の手がまだまだ足りていない現状が示された。課題を一つ一つクリアし、貧困状態にある子どもを社会で支える仕組みを構築したい。

 子どもの貧困を招く事例に多いのが、増加傾向にある一人親家庭。親は十分な収入がなく、仕事に追われて子どもと触れ合う時間も取れないため、子どもの健全な心身の成長や学習の習慣化を妨げる恐れがあると指摘される。大人の目が届かないことは犯罪や非行の温床ともなりかねず、対策が急がれる。

 こうした中、親の帰宅が遅く子どもだけで夕食を済ませる「孤食」状況の子どもに手を差し伸べようと「子ども食堂」の取り組みが昨年、山形市や米沢市で相次いで始まった。公共施設などで定期的に子どもたちに温かい食事を提供する民間主導の取り組みだが、行政が委託や補助の形で支援する運営団体もある。

 中には地域の1人暮らし高齢者に門戸を広げる食堂もあり、ぜひ定着させたい取り組みだ。運営側は継続した子ども食堂開設に向け、調理場のある会場や人員の確保などの課題を抱える。開設頻度を増やし他の自治体にも広げるためには、公的支援の拡大が必要だろう。

 生活困窮家庭の児童生徒を集めた学習支援活動も行われている。キャラバンで報告した山形大の学生は「単に勉強の場ではなく、話を聞いてほしいからと通ってくる子は多い。親と話す時間が少ないため、自分の表現を受け止めてくれる人を子どもは待っている」と語った。子ども食堂と同様、孤立状態にある子どもの「居場所」づくりが求められている。

 貧困状態で育った中高生が、等しく教育を受けられる環境も重要だ。県ひとり親家庭応援センターの相談員がキャラバンで訴えた実態は厳しい。「親は借金して子どもを大学に入れたが返済できず、その子どもが数百万円の借金を負わされて、また貧困状態に陥ってしまう」。こんな「貧困の負の連鎖」を、どこかで断ち切らなければならない。

 政府は18年度、返済の必要がない給付型奨学金制度を新設するが、全国の住民税非課税世帯から大学などへの進学者のうち3分の1ほどの学生にしか恩恵はなく、不十分と言わざるを得ない。制度の恩恵が広く行き渡るよう早々に拡充すべきだ。経済的理由で進学を諦める子どもをなくし、将来を担う世代の可能性を広げることこそ国の責務だろう。

 子どもの貧困の根幹にある、親世代の貧困対策は急務だ。安倍政権は「働き方改革」として、非正規労働者の待遇格差や長時間労働の是正を掲げている。改革の行方は不透明だが、その成否が生活困窮家庭にとっては死活問題となることを国は認識すべきだろう。また親の就労機会の確保に向け、待機児童対策のさらなるスピードアップも求められる。

 貧困の負の連鎖を断ち、子どもが等しく夢を描ける社会をどうつくるのか―。大人たちが問われている。

(2017/02/24付)
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