第49回県少年の主張大会

【最優秀】 上路紗代(山形四中3年)

上路紗代(山形四中3年)

(再生をクリックすると音声が流れます)
「言葉で広がる笑顔の輪」

 「ありがとうございます」。「失礼します」。「よろしいですか」。人から、このような温かい言葉をかけられると、わたしは心が包まれたように穏やかになります。皆さんには、こんなたった一言で心が温かくなった、そんな経験がありませんか。感謝の気持ちを持つ人や、誠実な態度をとる人、誰に対しても尊敬の気持ちを持つ人は自分にそれが返ってくると、わたしは考えています。

 5月に東京修学旅行に行ったときのことです。自主研修に向かおうと、わたしの班は電車に乗り込みました。最初は車内が空いていて、座って、今から訪問する施設について思いを巡らせていました。ところが、駅が進むにつれて乗客は増え、車内も混雑してきました。そんなとき、初老の夫婦が、座っているわたしたちのすぐ前に立ちました。「席を譲った方がいいのかな」わたしの体は固くなり、心には葛藤(かっとう)が渦巻き始めました。窓には、都会の街のビル群が流れていきます。「声をかけたら、どう思われるだろうか。どうしようか。田舎から来たから、心配なのかな」いろいろな不安が胸に浮かんだものの、「やっぱり親切にするのが大切だ」と、自分に言い聞かせました。「どうぞお座りください」。そう言葉をかけた瞬間、確かに世界の色が変わったと、わたしは覚えています。まるで真っ暗なトンネルから抜け出したときに、明るく美しい青空が広がっているのを見たような、さわやかな気持ちになれました。

 その後、席に座られたそのおじいさんが教えてくださったことを、わたしは忘れることができません。「どこから来たのかい」と聞かれたわたしたちが、少し恥ずかしそうに答えると、その方はうれしそうに言いました。「山形か。あそこは『日本』が残っている場所だよ」。理解しきれていないわたしたちに、さらに言葉を続けます。「なぜだかわかるかい?それはね、人が温かいからだよ」

 山形への郷土愛と同時に、言葉のつながりを感じた瞬間でした。初老のご夫婦とわたしが偶然同じ電車に乗って、少し悩んで、決心して、それから、「どうぞお座りください」と声をかけて…。どれ一つ欠けても、あの言葉にあれほどの感動は味わえなかったと思います。席を譲ってもらったご夫婦が笑顔になった。素晴らしい言葉をかけてもらったわたしたちが笑顔になった。それを聞いていた周りの人が笑顔になった。まさに言葉のキャッチボールから生まれた笑顔の輪だと思います。

 最近の子供たちはコミュニケーション不足だと、よくいわれています。自分の気持ちを正直に相手に言えなかったり、素直に怒ることができなかったりすることが確かにあると思います。わたしは、それは言葉を恐れているからだと思います。「言葉はナイフよりも鋭い」というくらい、言葉は敏感で傷つけやすいものです。しかし、それだけが本当の言葉ではありません。言葉はコミュニケーションのためにあります。だから、わたしは「傷つける言葉」ではなく、「人を伸ばす言葉」を大切にすべきだと思います。

 皆さんも、日常生活での「言葉」を大切にしてみませんか。あなたが温かい言葉を相手に伝えることで、その人だけでなく、その周りの人へ、そして、社会へと笑顔の輪が広がっていくのです。言葉のキャッチボールを恐れずに楽しむことで幸せが返ってきます。

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