第49回県少年の主張大会

【優 良】 堀偉久麿(山形二中3年)

堀偉久麿(山形二中3年)

(再生をクリックすると音声が流れます)
「命のリレー」

 その日は突然やってきました。入院中だった祖父の容体が急変し、帰らぬ人となってしまったのです。祖父が亡くなった朝、病院から、危ないから急いで病院に来てほしいと電話がありました。僕も一緒に病院に行きました。病院についたときにはすでに意識がなく、心臓マッサージや人工呼吸をされていました。

 僕は、元気だった祖父のことが頭に浮かび、びっくりして声も出ません。母は、「じいちゃん、じいちゃん、目を開けて」と何度も言っていました。僕は情けないことにその状況に驚き、「じいちゃん」と呼ぶことすらできません。

 祖父が元気なときは毎日のようにけんかをしていた母は、ずっと泣いていました。そして冷たくなった祖父に「今までありがとう。苦労かけてごめんね」と言っていた母。その姿をそっと見ていた僕は、胸が締め付けられるように痛くなりました。父も人前では涙を見せませんでしたが、一人になったとき、大きな声で泣いていました。僕はあらためて祖父の存在の大きさに気付かされました。そして、祖父の命は母に受け継がれ、その母から僕の命が生まれたことをしみじみと感じさせられました。

 その2カ月後、僕は沖縄のガマの中にいました。ガマの中は真っ暗で、時間がたっても目がなれることはありません。自分でも目を開けているのか、閉じているのかもわからなくなってしまうほどでした。この修学旅行で、戦争で失われた命のことをたくさん学びました。ガマの中は何も見えないので、手を目のようにしながら、自分の赤ちゃんの顔をなぞったりしたこと。また、泣き声がうるさいからと、自分の手で赤ちゃんの口をふさいで殺してしまった話なども聞きました。

 平和ガイドさんが見せてくれた一枚の絵を見て、僕の心は凍ってしまいました。高い木の枝に少女の死体がぶら下がっている絵です。誰かが死体をぶら下げたわけでもなく、一人で枝に登って自分から死んだわけもありません。爆撃の衝撃で少女の体が弾んで枝にぶら下がったのです。それほど激しい、想像を絶するような出来事が65年前の沖縄にあったのです。生きたくても生きられなかった人たちの多くの命が失われました。命のバトンを誰かに渡したくても渡せなかった人たち。生きているのがあまりにつらくて自らバトンを落とした人たち。人の命って一体何なのか、命についてあらためて考えてみました。

 僕が今、ここに平和に生きていられるのは、父、母がいたから。そして祖父母がいて、そのまた曾祖父母がいてと命が受け継がれてきたからなのです。仏壇に飾られた、見たことも会ったこともない人たちの写真。小さいころから、意味もわからず、父や母に言われるがままに手を合わせていた人たちがいたからこそ、僕がここに存在しているのです。

 いろいろな困難を経て奇跡的に受け継がれたその命を決して粗末にしてはいけません。僕がここに生きていられるのは命が運ばれてきたから、まさに「運命」ということかもしれません。自分の命を大切にすることは、これまで受け継がれてきた命を大切にすること、そして後に続く命も大切にすること。また他人の命を大切にすることで、その後に続くたくさんの命を大切にすることにつながるのだと思います。「僕のところで命のバトンを落とすわけにはいかないのです」

 僕の命は、僕一人だけのものではありません。いろいろな人の思いや願いを受けながら生かされているのです。今ある自分の命を大切に、精いっぱい生きていきたいと思います。

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