第49回県少年の主張大会

【優 秀】 油井美帆(米沢二中3年)

油井美帆(米沢二中3年)

(再生をクリックすると音声が流れます)
「母の国から」

 「マガンダン ウマガ クムスタ カ? ペーデ バ タヨン マグラロ ンガヨン?」

 母と母の友達との会話…。わたしの家族はごく普通の家族です。違うことはたった一つだけ。それは母がフィリピン人だということです。父と母は、母の生まれた国で出会い、結婚しました。そしてわたしが生まれたのです。わたしは、生まれたときから日本人として育てられてきました。

 幼いとき、「かあさん、タガログ語を教えて」と言っても母は、絶対にフィリピンの言葉を教えることはしませんでした。「美帆、あなたは日本で生まれた立派な日本人、だから、タガログ語はいらないの」。母がタガログ語を使うのは、電話で友達と話すときだけ…。楽しそうなタガログ語の会話を聞くとき、フィリピン人としての誇りを忘れないようにするためなんだろうなと感じます。

 明るく元気で太陽のような母も、わたしたちを礼儀正しい立派な日本人に育てるため自分も日本人に近づくため、たくさんの苦労を重ねてきました。母の涙も、父とけんかして「フィリピンに帰る」と何度か言っていたこともわたしは知っています。文化の違い、食の違い、そして偏見、さまざまなつらさを乗り越えて今があるのです。

 母が、ほかの友達のお母さんと違うと知ったのは小学生になったとき、びっくりはしましたが、むしろ誇りに思う気持ちを持ったことを今でも鮮明に覚えています。それは、日本人として精いっぱい生きようとする母の努力の成果だったのです。

 「フィリピンってどんな国?」母に聞いてみました。仕事が少ない。「だからわたしも家族のために日本に出稼ぎに来たのよ」。子どもも働いている。物ごいする子もいる。不衛生な水。医者が信用できない。治安が悪く、テロもある。驚くことばかりでした。日本は恵まれている。日本に生まれてよかったとわたしは思いました。母は加えました。「でも、豊かではないけれど、そのぶん家族を思う気持ちは強いわ。近所もとっても仲がいいのよ。協力しないと生きていけないから」。あれ、これは今の日本に薄れてきていることだ。

 その後、ネットで母の育った国を調べてみました。知らないことがいっぱい。母が育った国、フィリピンに行ってみたい。祖母や母の兄弟やいとこに会ってみたい。大好きな母がどんな少女時代を過ごしたのか聞いてみたい。母が受けた、フィリピンの風にあたってみたい。スラムをこの目で見てみたい。そんな思いが募ってきました。

 日本人の父とフィリピン人の母、二つの国の血を受け継いでいるわたし。フィリピンをきっと理解し好きになれる。わたしならなれる、フィリピンと日本の懸け橋に。そんな自信が体の底からわいてきます。

 わたしの夢は国と国とをつなぐ仕事につくこと。まずは、母の国から。

 母の育った国フィリピンの良さと日本の良さをつなぎたい。そして、その輪を世界に広げたい。どの国の人とも仲良く手をつなぎ、争いのない地球にしたい。わたしの夢はふくらみます。

 自分の歩む道をはっきりと決めた今。もう一度母に聞いてみました。「かあさん、タガログ語教えて」「アラム クナ」母はすてきな笑顔でうなずきました。

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