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山形と映画館(中)-上山・トキワ館 押井守さんがロケ

2017年10月03日 09:19
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 世界的に有名な映画監督がロケを行った映画館が上山市にある。1990年代初めまで上山温泉街に存在した映画館「トキワ館」だ。「機動警察パトレイバー」などで知られる押井守さんの実写映画「紅(あか)い眼鏡」(1987年)「トーキング・ヘッド」(92年)の撮影地となった。

 きっかけはトキワ館経営者の長男で脚本家伊藤和典さん(62)=静岡県熱海市=が押井さんと仕事をしていたこと。伊藤さんは押井さんと組んだ「機動警察パトレイバー」のほか、「平成ガメラシリーズ」「ピストルオペラ」などの脚本を手掛けている。

 押井さん初の実写作品「紅い眼鏡」でも伊藤さんは脚本を担当した。ロケ地を探す中、押井さんに「伊藤ちゃんのとこの映画館どんな感じ?」と尋ねられた。トキワ館を下見すると、押井さんはレトロな雰囲気を気に入った。既に脚本家として活躍し、家業を継ぐつもりがなかった伊藤さんも「いずれなくなる映画館。いい記録になる」と思ったという。「紅い眼鏡」は主演のスケジュールに合わせて2日程度の強行軍だったが、ほぼ全編がトキワ館ロケの「トーキング・ヘッド」は隣の旅館にスタッフが泊まり込み、3週間かけて撮影、旅館のシーツをスクリーン代わりに、現像したての映像を確認した。「合宿のようで楽しかった」と伊藤さん。トキワ館には休業になる分の補償をして撮影した。

 トキワ館は伊藤さんの祖母志んさんが戦前に始め、婿である父の徹さんが後を継いだ。最盛期は人が入りすぎて2階の桟敷席の床が抜けたという逸話がある。温泉街の映画館という特性から浴衣姿の人が多く、週末の夜は成人映画も掛けた。「自分にとってデートの場所というよりは、もうちょっと猥雑(わいざつ)な大人の場所という感じ」と伊藤さんは振り返る。

 家族の住まいはトキワ館と棟続きで、映画産業が活況だった頃は、従業員も一緒に暮らした。伊藤さんは自宅で生まれたが、志んさんには「生まれる瞬間、鞍馬天狗がスクリーンを走っていった」とよく聞かされた。志んさんの部屋はスクリーンの裏に当たり、上映中の映画の音が聞こえてきたのだという。小学生の頃は伊藤さんも、映画の音がする志んさんの部屋で寝起きしていた。帰宅すると劇場の最前列に陣取り、特に特撮映画を好んで見た。用を足すときは「紅い眼鏡」にも登場するトキワ館のトイレを使った。映画と生活は一体だった。

 「大怪獣バラン」「地球防衛軍」「美女と液体人間」…。伊藤さんは3、4歳の頃から特撮映画を見続けてきた。「実家が映画館じゃなければこんなに小さい頃から特撮映画に触れていない」。自分でも特撮映画を作りたいという思いは、平成ガメラシリーズで結実した。トキワ館は映画と映画の作り手の二つを生み出したことになる。

 「紅い眼鏡」は7日午後2時45分、「トーキング・ヘッド」は9日午前10時半、ともにフォーラム山形(山形市)で上映予定。

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