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山形と映画館(上)-酒田グリーン・ハウス 市民の心に光と影

2017年10月02日 11:50
グリーン・ハウスの客席。スクリーンの前には生花が並んでいる
グリーン・ハウスの客席。スクリーンの前には生花が並んでいる
 山形は映画文化が根付いた土地だ。戦前から各地に特徴的な映画館が存在し、終戦直後は若い教師による自主上映運動もあった。市民出資による映画館の誕生も国内初だ。1989年にはそうした映画好きの土壌に支えられて山形国際ドキュメンタリー映画祭が始まった。一方、「街の映画館」は多くが姿を消し、映画館がひしめき合っていた山形市のシネマ通りには1軒も映画館がないという状況になっている。10月5日に開幕する同映画祭の企画「やまがたと映画館」と絡め、山形の映画文化を、地域と共にあった「映画館」を通し、見つめ直す。

 山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映される証言映画「世界一と言われた映画館」は、光と影を併せ持つ映画館「グリーン・ハウス」(1949~76年)にスポットを当てた。酒田市中町の繁華街にあった「グリーン・ハウス」は映画評論家の故淀川長治さんが、上映作品の質の高さや洗練されたこだわりのサービスから「世界一の映画館」と評し、地元の人に愛された。一方で、市街地22.5ヘクタールを焼き尽くし、被災者3300人余りを出した酒田大火の火元でもある。

 証言映画で記憶を語るのは足しげく通ったファンや元従業員、元消防士ら9人。酒田大火の火元という負の側面を持つため「『グリーン・ハウスのことは話したくない』という人もいるけど」と前置きをする人もいる。それでも「中学の時初めて友達と映画を見に行ったあこがれの場所」「ここで見た映画で仕事への志を新たにした」と、それぞれの心にしまっていたグリーン・ハウスの思い出は鮮やかだ。

 回転ドアの向こう側は夢の国―。小遣いの大半をグリーン・ハウスに使い、今もプログラムを大事に持っている女性はこう証言する。回転ドアを抜けると、入り口脇の喫茶店からコーヒーの香りが漂ってくる。ホールではスクリーンの前に生花が飾られた。上映前には「ムーンライト・セレナーデ」が流れ、観客の目が徐々に闇に慣れるよう、照明を段階的に落とした。家族やグループがガラス越しにくつろいで映画を見られる特別室、それにバーまであった。グリーン・ハウスは、支配人を務めた故佐藤久一さんが細部までこだわり抜いた映画館だった。

 久一さんがこだわったのは劇場の環境だけではない。上映作品は観客の入りに関わらず、「この映画を見せたい」と思えるものを厳選したという。証言映画の製作を企画した同映画祭事務局長の高橋卓也さん(61)=山形市=はラインアップの多様さと入れ替えの頻度に驚く。

 証言映画の監督を務めた佐藤広一さん(39)=映像作家、天童市=は「今と違って娯楽が少なかった時代、酒田の人にとって相当に特別な存在だったのでは。あり得ないことなのだが、この証言映画もグリーン・ハウスで上映できたら、と思ってしまう」と作り手の立場でも、今はなき映画館に思いをはせる。高橋さんは「グリーン・ハウスが多様な映画を市民に浴びせかけていたように、山形ではいろんな映画館が私たちの知らない輝きを放っていた。失われてしまった映画文化や映画館を見直したい」と語った。

 証言映画は9日午後1時半から、山形美術館(山形市)で上映予定。

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