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【ここが見どころ】(7)フレディ・M・ムーラー特集 ドキュメンタリー映画祭2017

2017年10月01日 18:50
「盲目の男のヴィジョン」の一場面
「盲目の男のヴィジョン」の一場面
小川紳介さん(右)と一緒にカメラに納まるフレディ・M・ムーラーさん=上山市牧野
小川紳介さん(右)と一緒にカメラに納まるフレディ・M・ムーラーさん=上山市牧野
 あるテーマや地域、映画監督について、まとまって集められた作品を一挙に見ることも映画祭の魅力のひとつ。今年の映画祭では、「共振する身体―フレディ・M・ムーラー特集」が企画されており、長短編あわせて14本の作品が上映されます。

 スイス・ドイツ語圏出身の映画作家フレディ・M・ムーラー(1940年~)のことを知っている人はそれほど多くありません。1986年に公開された「山の焚火(たきび)」は、スイス・アルプスの閉ざされた共同体のなかで姉弟による愛の悲劇を描いた作品ですが、日本国内でも高く評価を受けました。以後、現代の神隠しをモチーフにしてスイス社会を批判した「最後通告」(98年)や、アカデミー賞外国語映画賞のスイス代表に選ばれた「僕のピアノコンチェルト」(2006年)など、いずれも劇映画ばかりが商業的に配給された程度です。

 では、なぜ特集を行うのか―。ムーラーは、スイスの小さな山村に生まれ、チューリッヒの美術工芸学校で学んだあとに映画制作を開始します。この時期に彼が発表したのは、主に前衛的な芸術家を対象とした実験的なドキュメンタリー映画でした。創作行為の記録や、その営みを通して芸術家の世界に対する姿勢を思考するといった試みは、ドキュメンタリーにおいて普遍的なテーマだといえるでしょう。「エイリアン」のデザインによって日本でもよく知られた、H・R・ギーガーという画家がいますが、その幻想的な世界が誕生する秘密を探求した「パッサーゲン」(1972年)という作品もあります。

 ムーラーの作品の特徴として、非言語的な人間のコミュニケーション行為を挙げることもできるでしょう。目隠しをしてカメラマンが撮影した断片から構成される「盲目の男のヴィジョン」(69年)は言うまでもありません。山人たちはしぐさや、さまざまな手段を用いて互いの意志を交わし合います。私たちはふつう、目で見えるものや言葉の意味を頼りにして外界を理解したつもりになっています。けれどもムーラーの映画は私たちの通念を疑い、音や身体的な表現へ感覚を研ぎ澄ますことを提起するのです。ムーラーは、86(昭和61)年5月に上山市牧野を初めて訪れました。映画祭の創設に大きく携わったドキュメンタリー映画作家の小川紳介(35~92年)に会うためです。両者は、ベルリン国際映画祭で出会い、互いの作品に強く惹(ひ)かれながら親交を深めました。「ニッポン国古屋敷村」(82年)を撮影したとき、小川は自分の作品をムーラーの映画の双子のように考えていたといいます。

 スイス・アルプスは山形から遠いかもしれません。しかし、それぞれの共同体に固有の「アイデンティティー」を探すよりも前に、ナショナルな概念を超えて互いに反響し合うことにこそ注目すべきではないか―。とりわけ辺境の地に暮らす農民たちの社会と文化を映し出すムーラーの山3部作を通して、私たちは世界の広がりゆく感覚に出会うのです。

(「フレディ・M・ムーラー特集」プログラムコーディネーター・土田環)

◆上映日程◆
▽「山の焚火」=8日午後7時45分
▽「パッサーゲン」=8日午後3時10分
▽「盲目の男のヴィジョン」=7日午後0時40分
 ※会場は全て山形市民会館

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