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【ここが見どころ】(4)アジア千波万波<上> ドキュメンタリー映画祭2017

2017年10月01日 16:09
創造の発端―アブダクション/子供―の一場面
創造の発端―アブダクション/子供―の一場面
 日本から見て、東は太平洋、西はインド洋、地中海まで、地球の大きな部分を占める地域からの作品を対象とした部門「アジア千波万波」。地理を手がかりに今年のラインアップを一挙紹介する。

 まずは日本から。北海道を拠点に1997年から観客として映画祭に足を運んだ田代陽子監督の「風のたより」は、東日本大震災から2年間、原発の不安を抱えながら生きる人たちの生活を追う。出身である沖縄を起点として、写真や映像、パフォーマンス作品を発表している山城知佳子監督は「創造の発端―アブダクション/子供―」と「肉屋の女」の2本がノミネートされた。

 韓国からは、映画の可能性を追求した「ウラーッ!」と社会の閉塞(へいそく)感をシャウトする若い男性ユニットを追った「パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ」、ソウルのドヤ街に監督も住みながら生活保護制度のひずみを浮かび上がらせる「人として暮らす」の3本だ。

 中国からは3本が選ばれた。何年もかけて監督の父方の田舎に住まう女性たちのオーラルヒストリーを映像にしてきた自画像シリーズ「自画像:47KMに生まれて」と、視力や聴力に障がいを持つ子どもたちが通う学校の日常世界を描いた「カーロ・ミオ・ベン(愛(いと)しき人よ)」。「長江の眺め」には中国の現在が映画的時間の中に映し出される。

 香港で2014年に民主的選挙を求めて市民が立ち上がった雨傘革命を描いた作品は多数応募された。その中の1本が「乱世備忘―僕らの雨傘運動」だ。台湾からは2本で、台南芸術大の学生監督が、台南市にある再開発で取り壊される住宅と商店街が同居する「中国城」へ捧(ささ)ぐ「中国街の思い出」。台湾人監督がミャンマー・カチン州で撮った「翡翠(ひすい)之城」は、翡翠を採掘する監督の兄を中心に翡翠ラッシュに乗り遅れまいとする人々の熱気と落胆を描く。

 何千もの島からなるフィリピンやインドネシア作品からは、多様なアイデンティティーの一端が垣間見られる。西ティモールの「ノカス」は、ノカスと婚約者が直面する両家の結婚協奏曲。「猫、犬、動物、そしてサシミのこと」は、フィリピン・ミンダナオ島のゴム農園で働く少年と、漁村の個性豊かなキャラクターが登場する。幼い頃に家族ともどもマニラからロサンゼルスに移り住み、不法移民という監督自身の存在を映像に刻印したのは「ドロガ!」と「ディスインテグレーション 93―96」。

「夜明けの夢」の一場面
「夜明けの夢」の一場面
 インド作品は、今も紛争状態が続くナガランド州の棚田で働く人々のチョクリ語のハーモニーが響く「あまねき調べ」。貧困や家庭内暴力の連鎖により、犯罪を犯して更生施設にやってきた少女たちが語る「夜明けの夢」は、イランからの出品だ。レバノンからは3本。「このささいな父の存在」はゲイである監督が、父を、家族を、伝統や宗教に縛られた家父長制を、耽美(たんび)とユーモアに溢(あふ)れる映像で挑発する大胆不敵な自伝映画。「そこにとどまる人々」は、ある男の語りから、内戦の歴史が日常に影を落とし続けるシリアとの国境に近い村にとどまり続ける人々を映し出す。そして丸腰のパレスチナ人青年2人がイスラエル兵に射殺された事件の真相を銃弾の音声分析から解明するヨルダン人監督による実験映画「くるまれた鋼」。既存の国家の枠組みでは捉えきれない世界が凝縮している。

(アジア千波万波コーディネーター・若井真木子、山形国際ドキュメンタリー映画祭事務局・黄木優寿)

◆上映日程◆
▽「風のたより」=7日午後4時40分、9日午後7時10分
▽「創造の発端―アブダクション/子供―」「肉屋の女」=6日午後3時半、8日午後1時
▽「ウラーッ!」=6日午後5時40分、8日午後8時50分
▽「パムソム海賊団、ソウル・インフェルノ」=6日午後8時50分、7日午後4時20分
▽「人として暮らす」=6日午後2時20分、7日午前10時半
▽「自画像:47KMに生まれて」=7日午後1時50分、9日午後4時20分
▽「カーロ・ミオ・ベン(愛しき人よ)」=8日午後1時15分、9日午後1時10分
▽「長江の眺め」=6日午後6時、8日午後4時半
▽「乱世備志―僕らの雨傘運動」=6日午前11時、8日午後8時20分
▽「中国街の思い出」=6日午後2時20分、7日午前10時半
▽「翡翠之城」=7日午前10時45分、9日午後7時半
▽「ノカス」=6日午前10時半、8日午後3時40分
▽「猫、犬、動物、そしてサシミのこと」=6日午後1時、8日午前10時半
▽「ドロガ!」「ディスインテグレーション 93―96」=6日午後3時半、8日午後1時
▽「あまねき調べ」=7日午後1時40分、8日午前10時45分
▽「夜明けの夢」=7日午後8時50分、9日午前10時45分
▽「このささいな父の存在」=7日午後7時半、9日午後4時半
▽「そこにとどまる人々」=8日午後6時10分、9日午後1時45分
▽「くるまれた鋼」=6日午後5時40分、8日午後8時50分
 ※場所は全てフォーラム山形

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