テーマ:東日本大震災後の東北復興に向けた山形の役割
現状と課題
−3月11日から9カ月たった今も被災地は厳しい状況が続いている。復興へのビジョンはまだ描き切れていない。吉村美栄子知事は県議会12月定例会で震災への対応について言及していた。最初に口火を切っていただきたい。
再生可能エネ導入を進める「卒原発」を提唱。年度内に県の新エネ戦略を策定する。
吉村美栄子氏
県民生活の安定と避難者の受け入れ、被災県への人的、物的支援に全力で取り組んできた。今後も復興を支援していく。原発を直ちに止めることは現実的でないが、再生可能エネルギーの導入などを進め、いずれ卒業する「卒原発」を提唱した。国がエネルギー政策を見直す動きがある中、国の動きを先取りして県の新たなエネルギー戦略を2011年度中に策定する。日本海側と太平洋側のバランスが取れたインフラ整備が必要。リダンダンシー(代替性)を確保した災害に強い国土形成を進めていく必要がある。
−太平洋側に偏った国土構造の問題点が浮き彫りになったが、榎本鶴岡市長は日沿道建設促進新潟・山形県境地区期成同盟会、県港湾協会でそれぞれ副会長を務めている。
県内の道路、港、空港が被災地支援に大きく貢献。災害時に機能するためダブルネットワーク化を。
榎本政規氏
東日本大震災では国土の縦軸である国道7号や横軸の同112、113号の他、酒田港、山形空港、庄内空港など、県内の交通インフラが被災地支援に大きく貢献した。災害時に道路が機能するには、国道4号に対する東北自動車道のように路線が並行することと、太平洋側と日本海側に路線があるという両視点からダブルネットワーク化が不可欠だが、県内ではまだ構築されていない。防災上の課題も踏まえ、都市や港、空港を結ぶ高速道路や地域高規格道路などの整備を最優先プロジェクトとして強力に実施すべきだ。
今田正夫氏
大震災で農業生産のためのインフラ整備の必要性を感じた。燃料、畜産用の餌など、有事の際の安定供給体制の確保が重要。県内の備蓄基地の整備に向けて県と協議し、一定の見通しが立った。被災地の生産基盤の復旧が整うまで、要請があれば、コメの生産数量目標の一部を県間調整として引き受けたい。原発事故に伴う風評被害では、消費者ニーズを踏まえた商品段階での検査が大事。県と一緒に取り組んだ安全キャンペーンは有効だ。復興に向けて十分な役割を果たす上で山形の農業が元気になる必要がある。
−全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会で会長を務める立場から観光振興について。
旅館など2次避難所としてホスピタリティーを発揮。農業と観光の融合深め安全・安心の確立が大切。
佐藤信幸氏
地震発生直後から旅館、ホテルが2次避難所となり県内で延べ10万泊以上を提供した。車いすで避難してきた人が、元気になって歩いて帰ったケースもあり、旅館のホスピタリティーが発揮できた。原発事故に伴う風評被害では本県も損害賠償の対象になるよう国や東京電力に働き掛けていく必要がある。本県は地元農産物の魅力を観光の中心に集客をしている。農業と観光の融合を深め、安全・安心を確立することが大切。国と県、農業と観光が一体となって取り組み、難局を乗り越えていきたい。
−震災は産業界にも大きな影響を与えた。
間接的影響が大きかった産業界。新しい産業の創出と、競争より協調が必要。
安房 毅氏
直接的な被害は少なかったが、受注量の半減など間接的な影響は大きかった。急速な円高もあり、海外へ生産拠点の移転が進んでいる。仕事がない、先行きが見通せない、と中小企業にも海外に出ようという動きがある。県内でも企業の数がピーク時から1万社ほど減っている。国に求めるのは内需拡大振興策。これからは仕事を持ってくるだけでなく、新しい産業を生み出すこと、さらに競争より協調が必要。県には▽新しい産業の創出▽他県とのビジネスマッチング▽工業製品の地産地消−を期待している。
−アドバイザーとして意見、助言をお願いしたい。
大西 隆氏
東日本大震災の教訓を生かすために、三つのキーワードを挙げたい。まず「減災」。物的被害はある程度仕方ないが、人命は決して落とすことがないようにしようという考えだ。二つ目は「エネルギー問題」。▽安定供給▽低炭素▽安全性−についてどう補い合うことができるか、真剣に考える必要がある。最後は「国土の在り方」。首都機能や企業の本社など東京に全てが集中している構造は脆弱(ぜいじゃく)だ。山形を含む各地域が分担して支え合い、道路についてもカバーし合える柔軟でかつ危機に強い国土交通が求められる。当然、今後も被災地の復興が課題の中心となるが、この大きなテーマについても長い時間をかけて議論すべきだ。
−国会議員の意見を伺いたい。
豊かな資源を最大限活用。木材の安定供給が復旧、復興につながる。山形への拠点設置が重要。
鹿野道彦氏
エネルギー政策をどう進め、原発への依存割合をいかに減らすかが喫緊の課題だ。そこで再生可能エネルギーの拠点としての役割を山形に期待したい。耕作放棄地などを有効活用し太陽光、風力、地熱、バイオマスの導入を促す。国として農林水産業と再生可能エネルギーの振興を後押しする。また、経済の活力をどう生み出すか。素晴らしい食材を多く持つ山形で生産者が加工、流通に進出する6次産業化を広げたい。雇用も創出できる。原発の影響で輸出戦略の見直しを行ったが、輸出振興にもつながる取り組みだ。
日本のあるべき姿を発信するビジョン示しては。最先端の取り組みは既に県内にある。
近藤洋介氏
復興庁の設置では、被災県ごとではなく、東北エリアで権限を持つべきだとの思いを込め、政府案の修正に関わった。今後の山形にとっては連携が重要だ。国の3次補正予算のものづくり支援を生かし、福島、宮城両県で医療産業が動きだす構想がある。山形大をはじめ、この動きの中で山形も力を発揮できる。エネルギー関係は、住宅や自動車をはじめとした省エネ産業に大きな可能性がある。雇用創出や内需拡大にもつなげることができ、省エネ分野において山形がトップランナーとして打って出るべきだ。
本県は復興の姿を示すべき。日本人が求める心の豊かさのモデルだと、PRするのも役割の一つ。
加藤紘一氏
震災発生から9カ月が経過したが、日本全体は今も東北地方を注視している。こうした中、山形県は復興の姿を示すべきだ。決して豊かな所得水準ではないが、地元の産品で食事をして、地酒を飲んで楽しむなどという、日本人が求める心の豊かさのモデル県だということをアピールするのが(果たす役割の)一つだ。足るを知り、満足する。心の指針を示せる県にならなければならない。(震災の影響などから)来年はさらに不景気になるだろう。地元でしっかりとした企業をどうつくり上げていくかが求められる。
東京だけでなく東北が一体となったオリンピックのために支持をいただきたい。
遠藤利明氏
今求められているのは産業のネットワークで、これをどうつくるか。農業分野では、ただ物を作り、加工、販売するだけでなく、観光資源としても有効活用し、6次産業から観光などを加えた「10次産業」と言えるまでに発展させなければならない。またこういう時にこそ、夢がほしい。2020年に東京にオリンピックを招致しようとしている。これを復興オリンピックとしたい。東京だけでなく東北6県が協力し、何種目か実施できる形にしたい。さらにジュニアオリンピックの冬季大会も東北にもってきたい。
食料と再生可能エネの供給基地が山形の役目。発電は、遊休地の活用で農業との連携も重要。
吉泉秀男氏
被災地を何度も訪れた。発生直後から支援に駆け付け、温かく避難者を受け入れたことへの感謝の言葉を聞いた。山形県人であることを誇りに思う。国の復興施策は被災3県に手厚い半面、山形、秋田が対象にならないケースがある。風評被害に対する賠償は引き続き協議する。山形にとって大切なのは食料と再生可能エネルギーの供給基地となること。発電は太陽光、風力、洋上風力などの可能性があり、遊休地の活用で農業との連携も重要。岩手県、宮城県のがれきの広域処理が進まない問題も検討する必要がある。
復興を後押しする山形が元気であり続けるため、支援する力を支援する施策が必要。
和嶋未希氏
山形は行政、民間ともいち早く被災地を応援していく姿勢を示した。がれき処理の受け入れでも山形県は国に先駆けて独自の基準を設定するなど、県民の安全を担保した上で支援する形を行動で表した意味は大きい。肉用牛の全頭検査も山形から全国に広がっていった。県民の一人として誇りに思う。一方、震災発生に伴う大きな被害はなかったが、ここにきて県内の農産物、観光、建設業などにじわじわとダメージが広がっている。復興を後押しする山形が元気であり続ける必要がある。支援する力を支援する施策が必要だ。
友好、姉妹都市の関係被災地支援で役立った。14年の全国育樹祭実現を目指すべきでは。
岸 宏一氏
復興に向けて山形県がどのような役割を果たすかを言う前に、被災地の状況から多くのことを学んで災害に備えることが大切。災害が起きた場合、司令塔となる役所の機能を維持できるよう、耐震化するなどの対策が必要だ。宮城県石巻市の病院と山形市立病院済生館との間で電子カルテ(を管理するシステム)がつながっていたおかげで(石巻市の病院の電子カルテが消滅せず)助かったことがあった。隣県などと協力してこうした数多くの教訓を集め、しっかりした今後の対応マニュアルを作るべきだ。
雪を利用したエネルギーに可能性。山形のシンボルとしても面白い取り組みだ。
舟山康江氏
震災は日沿道を整備するきっかけとなったようだが、庄内空港のように今あるものを有効活用することとセットにして、そこを拠点にしないと意味がない。これをてこに東北一帯の観光、産業振興の活用策も一緒に考えるべきだ。また県内には自主避難者が多く、これからは仕事(雇用)を通じた受け入れに力を入れてほしい。地域のつながり、地域の良さを発揮した山形の在り方がまだまだある。内需をどう喚起し、どう応えるかを山形発で考えたい。地域のものを大事にという視点を今回の震災で学んだ。
渡辺孝男氏
放射性物質を含んだ被災地のがれき処理は難しいが、普通に処分できるような物については、県は積極的に受け入れていくべきだ。被災者は「子どもを野外で遊ばせたい」という気持ちが強い。県内で被災地の子どもたちに遠足や体験ツアーなどを楽しんでもらえば、観光面での風評被害は自然となくなるはず。被災地で活動するNPO法人などの育成・支援も大事だろう。一方で被災地では高齢者らに十分に手が届かなかったという話を聞く。県は災害時の要援護者を把握し、完璧に対応できるようにしてほしい。