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挑む、山形創生

第10部人を呼び込む(6) 外国出身者に聞くインバウンド

2016/12/13 10:44

 豊かな自然や精神文化、食など観光資源が豊富とされる本県。インバウンド(海外からの旅行)の拡大には外国人観光客のニーズを把握し、的確にアピールすることの重要性が指摘されている。県内在住の外国出身者は本県の潜在能力の高さを実感する一方、不便さや物足りなさを感じている面もある。米国、マレーシア、韓国出身の3人の率直な言葉は、今後のインバウンド拡大の示唆に富んでいる。

アニメを活用した観光誘客策を提案するキャサリン・スウィナーさん=山形市

■アニメを活用

 「コアなアニメファンは、遠くてもアクセスが不便でも訪れる」。昨年7月から県国際交流員を務めるキャサリン・スウィナーさん(26)=米国出身=はアニメを活用した観光誘客策を提案する。自らも好きなアニメのモチーフとなった岐阜県白川郷まで“聖地巡礼”した経験があり、「きっかけがアニメでもいいのでは。山形を題材にしたアニメもあり、出身の作者もいる。ぜひコラボレーションしてほしい」と話す。

 日本の戦国時代を舞台にした漫画「犬夜叉」のアニメを中学時代に見たことをきっかけに、日本の文化や歴史に興味を持った。山形に来てからは出羽三山のほか、新庄まつりや米沢上杉まつりなど県内各地に足を運ぶ。特に山伏体験は「人生の中で特別な経験になった」と振り返る。

「海外から見て山形は魅力十分だが、周辺の整備が必要」と話すリチャード・チンさん=川西町

 ただ、本県ではこうした体験内容の情報発信が不足していると感じている。「例えばサクランボの生産量のシェアが高いということをPRするより、サクランボ狩りが体験できるといった情報の方が大切」と指摘する。

 山形で過ごす中で気になっていることもある。これまで自分が来店すると、店員が困った顔をするケースが度々あった。「英語を話せないからだと思うが、拒否されている感じがしてとても傷つく」とこぼす。それは観光客にとっても同じだ。「観光客もみんなが英語を話せるとは思っていない。笑顔で迎えてほしい」と語る。

■案内人の育成

妻の実家でリンゴ農家を継いだ崔鍾八さん。田舎だからこその良さをアピールすべきだと強調する=朝日町

 川西町のリチャード・チンさん(49)=マレーシア出身=は地元で働く傍ら、同町国際交流協会の理事を務める。山形の魅力について「四季折々の観光地と食べ物があり、外国人が楽しめる素材はそろっている」と太鼓判を押す一方、「受け入れ態勢が不十分で、整備が必要だ」とする。

 毎年のようにアジア圏から知人や国際交流関係者を受け入れ、県内各地の観光案内や宿の手配をしている。地方を訪れる外国人観光客について「都会での遊びに飽きており、日本ならではの生活を体験したがっている」と強調する。受け入れ態勢の充実に向け、人材育成が欠かせないと感じている。「案内人制度をつくってもいいのでは」とアイデアを披露した。

■山形ならでは

 「田舎を求める外国人をもっと取り込んだ方がいい」と言い切るのは、朝日町でリンゴ農家を営む崔鍾八(チェ・ジョンパル)さん(46)=韓国出身。23年前に来日。東京の日本語学校、宮城県農業短期大で学び、同大の同級生だった妻の実家でリンゴ農家を継いだ。

 「山形の雪は大きな観光資源。リンゴ狩りなど農業体験もできるし、田舎ならではのおもてなしをすれば喜ぶ外国人は多いはず」と説明する。外国人旅行者のホームステイも受け入れており「日本の田舎を体験できる観光地として特徴をアピールすれば、もっと外国人を呼び込めるはずだ」。山形に根を張り、暮らしているからこそ分かった良さ。旅行者にも工夫次第で伝えることはできるはずだ。

(「挑む 山形創生」取材班)

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