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第2部「雪」 (4) 共助の除雪(上)

2016/2/20 17:05
協力して除雪困難世帯の軒下の雪を取り除く住民。尾花沢市は共助の除雪を推進している=14日、同市荻袋・和合集落

 尾花沢市は上空から俯瞰(ふかん)すると、山手に向かって無数の集落が放射状に点在しているとされ、結び付きの強い集落の連合体ともいわれている。市などは、除雪にこうした集落による「共助」を生かす取り組みを進めている。

■一斉作業

 代表的なのは、市が本年度始めた「地域一斉除排雪補助金」の制度だ。日時を決めて集落の生活道路を通行止めにし、各家が生活道路に掃き出した雪をロータリー除雪車とダンプカーで一気に除雪する作業をサポートする。市がダンプカーの借り上げ料など最大20万円を補助する。

 尾花沢市荻袋の和合集落では14日、一斉除排雪が行われた。各家の敷地には、暖冬の今年でも大人の背丈ほどの雪が積もっていた。屋根の下は落下した雪が堆積し、スコップを何度入れても先が見えない。10人ほどの住民が重機を使い、敷地から雪を掃き出した。既に雪が解け、むき出しになった道路沿いの戸口には、次々と雪塊が押し出された。住民は特段の指示がなくても、高齢世帯の軒下に重機を入れていく。普段からの付き合いがあってこその作業だ。

 区長の菅野誠治さん(65)は「高齢世帯がいっぱいあるから、みんな雪を出してくれるかなと思って」と市の事業に参加した理由を話した。

 市社会福祉協議会の除雪ボランティアセンターは、2012年に発足した。全国からボランティアを募り、市や民生委員の協力で把握した高齢者世帯などの雪を取り除いている。

 同センター広報部会長の二藤部久三さん(61)は「『結』ってあるだろ。昔、田植えや稲刈りで人手が必要な時、隣近所で助け合っていた生活習慣だ。これが基本」と語る。

 今季は市内38カ所でボランティアを受け入れ、地域住民を交えて約520人が作業した。二藤部さんは「地域の勝手は住民が一番分かっている」と話し、将来的には地域主体の展開にしたいという。

■自発的に

 自発的に共助による除雪を始めた集落もある。市南部にある細野集落がその一つ。去年12月現在で77戸、254人が暮らす南北に細長い集落で、農家レストラン経営など地域活性化に熱心な地区として知られている。仕掛け人は元区長で細野の地域おこしグループ「清流と山菜の里ほその村」会長、五十嵐幸一さん(71)だ。

 集落や住民の除雪機を借り、高齢世帯の除雪を行っている。昨季は5戸、今季は空き家を含む計13戸で取り組んだ。集落内で10人の担当者を決めて運営しており、活動も板についてきたという。

 五十嵐さんは「ほその村」を軸にグリーン・ツーリズム的な地域おこし事業を次々と企画している。4月には、これらのイベントを通じ知り合った東京の女性や、市出身の女性2人が集落に移住することが決まった。「除雪は自分らがするから、安心してくださいと言っている。大変な除雪を集落で支え、移住者を呼び込むような取り組みを続けたい。次の世代にもこの仕組みを受け継いでいきたい」と笑顔を見せた。

 加藤国洋尾花沢市長は言う。「昔ながらの『結』の精神や、田舎の近所付き合いが嫌だと都会に出ていくものの結局、人間関係が恋しくなってスマートフォンが手放せなくなり、いろんな社会問題も出てきている。それだったら、地域社会で共助の精神を大事にしながら暮らした方が健全だ」

 人口減少問題に直面する尾花沢市。雪は人材流出の大きな要因だが、人と人、地域をつないできた存在でもある。雪国では昔から長い冬を家族や住民が知恵と力を合わせて乗り越えてきた。地域をつなぐ雪。雪のこんな一面を見つめ直すことが今、求められているのかもしれない。

(「挑む 山形創生」取材班)

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