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[41]石英ガラス・シリコン加工 テクノクオーツ(山形)

2015/12/6 12:02
石英ガラスを透明にする「焼き仕上げ」の作業。加工に特化した企業だからこそ蓄積された技術を持つ=山形市・テクノクオーツ蔵王工場

 パソコンやテレビ、スマートフォン、洗濯機…。あらゆる電化製品・自動車に組み込まれる半導体チップや液晶の製造装置用石英ガラス・シリコン加工製品を世界に提供しているのが、テクノクオーツ。その主力工場が創業の地、山形市にある蔵王工場と蔵王南工場だ。直接の顧客は、半導体チップや液晶の製造装置メーカーだが、便利で快適な現代人の生活、家電の発展を支えている。

 スマホの高画質化が進んだのも電池が長時間持つようになったのも、背景には同社のような装置用部品メーカーの技術革新がある。

 同社は、国内で半導体製造装置用石英ガラス製品の加工市場が成長し始めた1970年代後半、同分野に進出。石英ガラス材料そのものの製造から手掛ける企業がある中で、同社は加工に特化した。だからこそ蓄積された加工技術を持つ新分野の中の“老舗”であり、半導体製造装置に使われる石英加工製品生産高で国内シェアの約2割を占めるトップメーカーだ。2013年3月期決算からは、海外企業への売り上げの方が多くなった。

■異業種との連携

 実績に裏打ちされた技術で、新製品を作りたいという顧客メーカーの要求に応えてきた。一例が、複雑な形状の石英ガラス部材同士を、加熱・加圧し、強度を保ったまま接合させる「石英拡散接合」だ。この接合で、内部に精密流路を形成した部品や多層構造にした部品を製造できる。温度、圧力、時間の複雑なコントロールの難易度が極めて高いため、他社ではほとんどできないという。石英拡散接合で生まれた製品は、結果的に家電などの高性能化に役立っている。

 自社の強みと異業種他社の技術とを融合した新製品開発も手掛ける。これにより、2年前には4Kテレビやスマホに使われる高精細液晶パネルの製造装置向け高性能部品を製品化した。詳細は明らかにできないというが、同社はコンセプトを構築した上で4社と連携し、他社より品質、価格ともに優れた新製品を開発した。

「石英拡散接合」の技術で内部に精密流路を形成した製品

■全てにメリット

 他分野で得意な技術を持つ企業との連携によって開発速度が上がり、単独ではなし得ない革新が可能になる。しかし、それには各社の技術を深部まで理解し、細やかに調整できる指揮者としての能力も不可欠だ。「目指すのは自社、連携企業、顧客である装置メーカー、その装置から生まれる商品を使う消費者の全てにメリットがある製品開発」と磯貝宏道製品開発部部長(44)。他社との連携で生まれた製品は多様な分野で採用され始め、徐々に生産量を伸ばしている。

 トップであり続けるために必要なことは何か。根生辰男社長(63)は「類似品は必ず出てくる。そのころには次のステージにいることだ」と言い切った。そのためには開発も重要だが、それ以上に製造工程の革新が鍵になる。類似品が出るころには、より短期間、低コストで製品提供できる体制を、同社は整えている。

 この生産力、開発力の基盤は、平均年齢38歳という社員の若さだ。柔軟性、体力、集中力に優れた組織となり、変化の激しい業界によくある短納期での大量受注にも応える。

 同社の製品が一般消費者の目に触れることはない。しかし間違いなく、生活に欠かせない製品だ。「見えなくても、社会貢献できる仕事」。増田勇生産本部副本部長(45)は言った。

(ものづくり取材班)

テクノクオーツ 分析機器の部品製造会社ガスクロ・ヤマガタとして1976(昭和51)年、山形市上椹沢に創業。78年に半導体製造装置用石英ガラス製品分野に進出。91年、社名をテクノクオーツに変更。98年、同市の蔵王産業団地に蔵王工場を新設し、本社を移転。2002年に本社を東京都に移す。社員数203人。15年3月期の売上高は50億5200万円。世界に約300社の顧客を持つ。

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