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[35]リサイクル関連機械開発 カネト製作所(上山)

2015/10/18 15:34
自社開発した石こうボードの石こうと 紙を分離するシステムプラント。大き さは縦約4.8メートル、横約13.5メートル、奥 行きは約6.2メートル=上山市中山

 金属部品、加工機械がずらりと並ぶ広い工場。出荷を待つ大きなプラントがひときわ目を引く。石こうボードの石こうと紙を分離する大型のシステムで、独自の発想で作り上げたリサイクル関連の自社開発製品だ。高品質の金属部品を供給する精密板金加工企業のカネト製作所(佐藤晃次社長)。手本がなかったリサイクル関連機械開発で、生みの苦しみを何度も経験してきたプロ集団の原動力は「ハングリー精神」という。

■下請けを脱却

 同社の主力は精密板金。農業機械、照明、スチール家具、印刷機、ゲーム機などのカバーや外枠など幅広い分野の需要を満たす。自社製品開発はおよそ40年前にさかのぼる。原田善則会長(71)は「ものづくりの会社として、何か世に売り出せないかという思いがあった」と、下請けからの脱却を図った当時を語る。兼業農家だった社員が、田んぼの水の調整をしたいから仕事を休む、と発した言葉がヒントだった。鉄板を加工し水量調節を可能にした、水路と田をつなぐミニ水門を開発。好評を博した。

 開発意欲は一層高まった。社会的にリサイクルへの理解が進んだこともあり、環境関連へとかじを切った。当時、埋め立て処理が主流だったガラス瓶を破砕して量を減らし、処理場の延命に貢献できるようにと、1987(昭和62)年には、ガラス瓶破砕機を開発し発表。安全性や効率性が評価され全国的なヒット作となった。2009年には南極観測船「しらせ」にガラス瓶破砕機が搭載された。

カネト製作所の主力は精密板金加工。この技術をベースにリサイクル関連機械を開発している

 装置内部の金属性の固定刃と回転刃でガラスを砕く仕組みが肝。このコア技術を、粒子を細かくできるガラス瓶砂状化破砕装置の開発に転用。石こうボードと紙の分離システムや、廃棄物の焼却炉から出る「溶融スラグ」と呼ばれる非常に硬い燃えかすを、道路舗装の骨材にする整粒システム開発にも応用した。石こうボード処理は、粉じんを抑えるため低速で稼働するものが主流だったが、同社は集じん装置を備え高速で処理することを可能にし、作業効率を飛躍的に高めた。スラグ処理装置は、焼却炉の温度や燃焼システムの違いをとことん研究して製品化、回転刃などはノウハウの塊そのものだ。

■体当たり解決

 プラントといえば、厚い鉄板でできた、いかにも頑丈そうなイメージがあるが、同社の製品は一見、きゃしゃな印象を受ける。「強度が必要なところは頑丈に、それ以外に過度な補強は不要。精密板金で金属を熟知しているからできること」と口をそろえるのは、高村勅之総務部長(41)とセールスエンジニアで自販・開発部担当の鈴木康弘課長(42)。プラント全体の重量を軽くでき、取り回しに優れるのが強み。メンテナンスもしやすい。鈴木課長は「お手本になる機械がなく、問題が起きるたび、先輩たちも体当たりで解決してきた。ビジョンがぶれなかった結果」と、自身も試行錯誤を繰り返した経験を振り返る。

 一方、これら機械の新規受注は「市場が飽和状態」(鈴木課長)で、現在は頭打ちに。メンテナンスや機材の更新がメーンだ。スラグ装置を例に取ると、自治体などの焼却炉は簡単に止めることができないため、ユーザーにはあらかじめ稼働用とバックアップ用に複数台を購入してもらい、現場での使用とメンテナンスを同時並行する運転システムを構築している。

 これまで県産業賞など数々の賞を受けてきた。「このような取り組みが賞につながってきた」と原田会長は話す。持ち前のハングリー精神で前進している同社。時代を先取りしたニーズを見据え、それに応えるものづくりを模索し、今後も挑戦を続ける。

(ものづくり取材班)

カネト製作所 1967(昭和42)年、上山市金生で創業。同市原口への工場移転を経て、95年に現在地の同市中山に本社・工場を移転。従業員は62人(2015年9月現在)。15年3月期の売上高は約8億7千万円。

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