食と農を問う

甘くシャキシャキ、食感が人気 規格外は漬物に、都市部で好評

軟白ネギの澄んだ白さが際立つしょうゆ浅漬け。仕上げの袋詰めに追われる従業員=鶴岡市・帯谷食品
軟白ネギの澄んだ白さが際立つしょうゆ浅漬け。仕上げの袋詰めに追われる従業員=鶴岡市・帯谷食品
 庄内砂丘に並ぶハウス内。等間隔に整列した緑の葉部分だけを見れば変哲のないネギ畑だが、どこか普通と違う。盛り土されておらず、下半分がスカートのような黒いシートで隠れている。めくってネギの外皮をむくと、雪のように白く透き通り、スラリとした茎が現れる。じっくり見ていると、妙な気恥ずかしさを覚える。
[動画付き記事 動画はコチラ]

 真冬に収穫の最盛期を迎える軟白ネギ。庄内で今最もブレークしている作物で、だだちゃ豆に次ぐ新たな特産品として期待されている。一般のネギは土寄せして「白根」と呼ばれる茎部分を伸ばすが、軟白ネギは黒いシートで覆い光を遮断し茎を白くする。土寄せと比較して、生育中のストレスが少ないため、辛みがマイルドで柔らかく仕上がるという。

 北海道から導入された作物だ。本県では昭和50年代に遊佐町で真っ先に取り入れられたが、定植後の栽培が難しく作付けは広がらなかった。県庄内総合支庁農業技術普及課産地研究室(当時は砂丘地農業試験場)、生産者、JAが3年間かけて新地域ブランド技術確立実証事業として取り組み、適応品種、低コスト化、曲がり防止、病害虫対策といった課題をクリア。2002年度から本格栽培に入った。

 砂丘メロンの後作として、特に鶴岡市西郷地区で導入が進んだ。稲作とも時期が重ならないため、平地の土畑でも水稲育苗ハウスの後作として作付けは拡大。ブランド化が進められたミニトマトをしのぐ伸びをみせ、02年度に庄内全体で1.2ヘクタールだった作付面積は、09年度には10倍以上の14.1ヘクタールに上っている。

 鶴岡市茨新田の近藤則昭さん(38)は、ハウスにして5棟計25アールで栽培。JA鶴岡長ねぎ専門部会約140人のうち、面積が最も広い。気温10度ほどのハウス内には、1メートルほどに育った黒スカートの軟白ネギが14列、90メートル先まで広がり、出荷を待っている。

 収穫は12月に本格化する。近藤さん方は翌5月までのロングランだ。2月上旬、JA鶴岡営農指導係の今野大介さん(31)が出来栄えを確認するため現場を訪れていた。近藤さんは「日照不足に加えて秋の雨期が長かったせいで、葉枯れが多く発生した。栽培に取り組んで9年目になるけど、難しい条件が重なった」とちょっと浮かない顔を見せる。

 今収穫を迎えているのは、5月下旬に種をまき、7月下旬に定植したもの。ネギが曲がったり倒れたりしないよう、成長に応じて支柱を立て、ひもを張り、ある程度伸びたところでシートで覆う。こうした9カ月間にわたる手間の集大成だ。近藤さんは両親とともに、1本ずつ丁寧に抜き取り、外皮むき、袋詰めの作業に追われる。

軟白ネギの生育ぶりをチェックする近藤則昭さん(右)と今野大介さん=鶴岡市
軟白ネギの生育ぶりをチェックする近藤則昭さん(右)と今野大介さん=鶴岡市
 12月から3月にかけて、JA鶴岡は「雪中軟白長ねぎ」、JA庄内たがわは「雪中軟白ねぎ」と微妙に違うブランド名で売り出す。庄内全体での生産量は、本年度初めて300トンを突破する見通しで、向かう先は主に首都圏という。

 甘くて、柔らかく、シャキシャキとした食感が人気の秘密。アル・ケッチァーノ(鶴岡市)のオーナーシェフ奥田政行さんばりに、取れたてをそのままかじってみる。辛みは抑えられ繊維がきめ細かい。地元ではしらがねぎを水にさらしサラダ、しゃぶしゃぶにして出す飲食店も増えているが、近藤さんの一押しメニューはぶつ切りのてんぷら。いわく「甘みが凝縮されて、いける」。

 JA鶴岡は軟白ネギの出荷に際し全体で72センチ程度、茎部分は40センチ以上といった長さの規格を設けている。厳格な規格は多くの規格外品を生み出す。全体の7〜8%を占める「はじかれもの」の有効活用が産地化に向けたポイントになる。

 漬物製造の帯谷食品(鶴岡市茨新田)は、規格外の軟白ネギを使ったしょうゆ浅漬けを開発し、今冬から首都圏や仙台での本格販売をスタート。この時期一番のヒット商品になっている。

 「細すぎたり、短かったりしても、生産者がかけた手間暇は一緒。野菜を無駄なく使う漬物屋の得意技を生かして、ちょっとでも地域を元気にしたい」と社長の帯谷安弘さん(52)。ピーク時には1日500キロに及ぶ規格外品をJAを通して引き取り、3〜4日間漬けだるに。シャキシャキ感を残すため重しは軽めで、葉も捨てずに活用、庄内柿の柿酢がしょうゆだれのいいアクセントになっている。茎の白さはそのままで、黒いたれとのコントラストが食欲をそそる。

 パッケージの「地域資源」が目を引く。東北経済産業局と東北農政局の地域産業資源活用事業計画として認定を受けたことを指している。昨年末に東京・銀座のアンテナショップ「おいしい山形プラザ」で飛ぶような売れ行きをみせた。県内でも、今月からは地元だけでなく内陸のスーパーにも並ぶようになった。

 「ふぞろいな野菜たち」と、テレビドラマの名作をほうふつさせるシリーズで、春は遊佐産ウルイ、初夏は羽黒産アスパラガスも商品化の運び。地域の旬のはじかれものを使って、地域の元気を生み出す取り組みを広げている。
(「食と農を問う」取材班)
(2010年02月14日 掲載)
食と農を問う 庄内砂丘・軟白ネギ 記事一覧
文字サイズ変更
  • 小
  • 中
  • 大
地域ニュース読みくらべ
ニュース特集

スポーツ

教育・子育て

おでかけ

暮らし情報

twitter発信中

山形新聞からお知らせ

  1. 【ワイドヤングに新コーナー】
     「住みます芸人三浦友加の同級生トーク」に代わり、4月から、三浦さんが読者の悩みについて相談者の手相を基にアドバイスする新コーナーがスタートします。毎月1回掲載。見てほしい人は手相の写真と悩みを、ペンネームと年齢、市町村名を添えて「ヤング係」まで送ってください。Eメールの送り先はyoung@yamagata-np.jp
  2. 【〈東北未来絵本キャンペーン〉にぜひご参加を】
     山形新聞は3・11東日本大震災を忘れずに、語り継ぐための「絵本」を作り、子どもたちに贈る「東北未来絵本」キャンペーンを展開しています。皆さんから寄せていただく言葉を集めて物語をつくります。そこに絵本としての命を吹き込むのは、山形出身の絵本作家・荒井良二さんです。荒井さんから2回の問い掛けが届きました。(1)「あのとき、みんなの手は、何をつかんでた?」(2)「あれからみんなの日常は何か変わったかなぁ?」。皆さんの「答え」をお待ちしています。こちらのページからも投稿可能です。
  3. 【人事異動】スマホ、携帯でも
     山形新聞は、スマートフォンサイトのドコモ版「モバイルやましんスマート」と、携帯サイト「モバイルやましん」に人事特集コンテンツを設け、県職員や県教職員をはじめ市町村、各種機関、団体、企業など、県内の人事情報を掲載しています。役職や姓名の一部などのキーワードから検索できる便利な機能を備えています。こちらのページのQRコードからアクセスしてください。
  4. 【ロードレース大会の写真を提供】
     山形新聞社は、29日に開かれた第52回県冬季ロードレース大会(山形新聞、山形放送、山形陸上競技協会主催)で、本社カメラマンと記者が撮影したレース写真を、きょう31日からホームページ(HP)に掲載し、提供します。  沿道の声援を受けてひた向きに走る選手の姿や、ライバルとの激しい競り合いなど、本紙に掲載しない写真も含めてHPにアップします。やまがたニュースオンラインにアクセスし、トップページの「おすすめ」のコーナーにある「やましんフォトギャラリー」をクリックすると、閲覧と申し込みができます。写真のサイズはキャビネ判から四つ切りまでの4種類です。山新ヨモーニャくらぶ会員は20%引きです。アドレスhttp://yamagata-np.jp/p-shop/
  5. 【ふるさとの話題を毎週配信】
     離れていても近くにいても、ふるさとの話題は気になるもの。そんなあなたへ「ふるさとだより」。山形、天童、寒河江、東根、村山、酒田、鶴岡の7市が発行しているメールマガジンです。各自治体の情報と、山形新聞に掲載されたそれぞれの自治体の関連記事をまとめて週1回、登録者に電子メールで配信しています。登録は無料、こちらからhttp://yamagata-np.jp/furusato/
  6. 【書籍の無料配達サービス】
     書籍の宅配サービスを始めました。配達は無料です。ご注文・お問い合わせは山形新聞社販売局「本の宅配便」係
    ・フリーダイヤル(0120)818040
    ・ファクス023(631)8044
    山形新聞ホームページ、携帯サイト「モバイルやましん」からもご注文いただけます。詳しくはこちら
  7. 【県女子駅伝写真提供】
     ヤマザワカップ第28回県女子駅伝競走大会のレース写真を販売します。山新ヨモーニャくらぶ会員は20%引きです。詳しくはこちら
  8. 【中学高校スポーツアーカイブ】
     本紙に掲載された中学、高校の各種スポーツ大会の記録を、携帯サイト「MOBILEやましん」で閲覧できるサービスを始めました。検索機能も備えています。アクセス方法はこちら
  9. ◆探したい記事がきっと見つかる、山形新聞記事データベース。他社DB横断検索が便利な日経テレコンジー・サーチファクティバ
  10. ◆県外でも今日の朝刊が朝一で読める「お届け電子版
  11. ◆ニュース速報、高校野球、モンテ情報、おくやみ… 身近な情報を携帯で確認「モバイルやましん
  12. ◆故郷の話題をメールでお届け、ふるさとメール会員募集(登録無料)
山形新聞から
販売から