食と農を問う

ブランド維持 厳密に選果、評価と産地守る

JAみちのく村山は高精度の選果施設を導入し、ブランド「尾花沢すいか」の維持に努める=尾花沢市新町5丁目、東部すいか選果施設
JAみちのく村山は高精度の選果施設を導入し、ブランド「尾花沢すいか」の維持に努める=尾花沢市新町5丁目、東部すいか選果施設
 「夏スイカ生産量日本一」として全国に知られる尾花沢スイカ。生産量だけにとどまらず、独特のシャリ感(食感)と高い糖度、さらに濃い緑と整ったしま模様の外観など、良質なスイカとして、市場から高い評価を受けている。その出荷量の7〜8割を占めるのが、JAみちのく村山の統一ブランド「尾花沢すいか」だ。同農協は高精度の選果システムを導入し、良品質スイカ産地維持への努力を続けている。その取り組みは、市場での尾花沢スイカの高い評価に直結している。
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 JAみちのく村山は約500戸の生産者が作るスイカの選果拠点として、東部すいか選果施設(尾花沢市新町5丁目)と西部すいか選果施設(大石田町大石田)を持つ。ピーク時の処理日量がそれぞれ5万個にもなる両施設は「尾花沢すいか」の規格と品質を厳格に統一している。さらには、生産者が行う荷造り、出荷作業の重労働を軽減している。

 選果施設のスイカ荷受けは午前7時半開始。東部すいか選果施設にはこの時季、早朝からスイカを満載した生産者のトラックが続々到着し列をなす。生産者はまず、駐車場に設置されたコンテナハウスで、糖度と目視による品質の検査を受ける。

 係員がトラックの荷台から任意にスイカを選び出し、コンテナハウス内に運び外観を点検。包丁でスイカを2つに割って、空洞の有無をチェックした。さらに種の色や、皮と果実の色の差などを確認した上で、熟期に達しているかどうか判断する。

 次に係員は、スプーンで果肉をすくうと、糖度計にすりつけゲージをのぞき込んだ。「12度。合格」。生産者はホッとした表情を浮かべ、トラックを荷受けコンベヤー前に移動させた。もしも糖度表示が11度に達しない場合は、容赦なくトラック丸ごと、受け入れが拒否されてしまう。生産者にとっては緊張の瞬間だ。

 無事、荷受けされた果実はライン上を自動移動。広大な施設内を無数の大玉スイカが動き回る様子は、さながらスイカ工場のようだ。ブラシ磨き、変形としま模様検査、音波による空洞と内部の傷み測定、近赤外線透過による糖度分析などを順次受け、「尾花沢すいか」の基準に達しないスイカ(1〜2%)は途中で取り除かれる。その後、生産者の名入りラベルが1個ずつ張られ、各等級に分別、箱詰め。パレット上に積まれていく。これら一連の作業が、無数のセンサーや機械、ロボットを使うことでほぼ自動化されている。

 「20年ほど前まではすべて手作業で、生産者にとってはかなりの重労働だった。今では作業効率が飛躍的にアップした」と同農協の尾花沢営農センター次長で東部すいか選果施設責任者の千葉喜美さん(49)=尾花沢市鶴巻田=が話す。今月下旬から8月10日ごろまでのピーク時は、連日午後8時すぎまでフル稼働し、東部だけで1日約2万5000ケース(5万個)を出荷。大型トラック40台ほどが京浜、関西地域を中心に約30カ所の市場に「尾花沢すいか」を運ぶという。「昔のような手作業では対応できない」

 同農協は、生産者による自己(1次)選果と選果システムでの厳しい検査を通じて良質な「尾花沢すいか」を安定供給、ブランドの維持を図っている。「それでも1シーズンに20件ほどはクレームがある」と千葉さん。ラベルを見れば生産者が分かるので、問題点を一緒に検討する。

 地元農家の生産技術とこまやかな園地管理から良質なスイカが生まれる。選果施設導入によって、重量野菜ならではの作業上のネックも軽減された。しかし、冷夏になった場合に消費者が食べてくれなくなるという“永遠の課題”は残る。

 そこで市場相場の下落に対応するため、同農協は7月中旬〜下旬(早出し)、8月上旬〜中旬(普通出し)、8月下旬〜9月上旬(遅出し)の約50日間に栽培を平準化した出荷を勧めている。作期を長期化することでリスクが分散され「仮に早出しの相場が悪くても、その後回復すればトータルで利益が確保できる」と千葉さんは説明する。1戸当たりの栽培面積が増えたため全体の生産量は変わらないが、「長期的な産地維持を考えた場合、生産者の減少が心配だ」とも話す。

「従業員の年間雇用策としてスイカ栽培に取り組んでいる」と話す八代建設の八代一社長(中央)=尾花沢市尾花沢
「従業員の年間雇用策としてスイカ栽培に取り組んでいる」と話す八代建設の八代一社長(中央)=尾花沢市尾花沢
 そんな中、同市の八代建設は、企業としてスイカ栽培に取り組んでいる。訪れた日も、東部すいか選果施設そばの畑で、従業員4人が大玉スイカ栽培に従事していた。果実を丸く充実させる一方、美しい緑と黒のしま模様に仕上げるためスイカの下に“座布団”を敷く作業だという。

 「冬季間必要になる除雪車のオペレーター要員を年間雇用するため、夏場にスイカ栽培を始めた」と、八代一社長(62)=尾花沢市上町4丁目=が参入の理由を語る。「公共事業が減ったことも大きな理由の1つ」。従業員17人のうち5人をスイカ栽培に充てているという。0.6ヘクタールの畑から始め、荒れ地を借り受け、自社の重機でスイカ畑にしていった。3年目の今年は、5カ所で合計2.5ヘクタールの園地に、小玉スイカと合わせて約2万個を栽培している。

 「尾花沢の名に恥じないおいしいスイカを作らなければ−というプレッシャーがある。しかし市場で(尾花沢スイカの)名前が通っているため、良いスイカを作りさえすれば売れる。ほかの作物ではこうはいかない」と八代社長。「産地を形成してくれた先人に感謝している」と話す。

 同社は、麦わら帽子をかぶった八代社長のイラスト「はじめちゃんすいか」をトレードマークに採用、PRにも力を注ぐ。インターネットを使った通販や市場出しなどで、顧客リストは既に約700人に上るという。しかし「まだまだ先行投資で赤字だ」と八代社長。「これからの3年間で黒字にしたい」と「はじめちゃんすいか」の将来を展望している。

(「食と農を問う」取材班)

 【尾花沢すいか】JAみちのく村山が出荷する尾花沢スイカの統一ブランド。1シーズンの出荷数量は約120万ケース(2個入り)に上る。前身は昭和40年代からの統一銘柄「花笠すいか」。徹底した品質管理で、市場評価が高まった。さらに1995年、JA村山市、JAおばなざわ、JA大石田が広域合併しJAみちのく村山が発足すると、統一ブランド「尾花沢すいか」が誕生した。2002年度には、農業生産総合対策事業として東部すいか選果施設(尾花沢市)、西部すいか選果施設(大石田町)の大型選果システムが完成した。
(2009年07月26日 掲載)
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