東日本大震災

震災1年-県産業界の現状(下)

2012年03月11日
【製造】V字回復も響く円高
震災後、商品の供給が滞り空になったスーパーの食品棚。現在は完全に回復したが、県内の食品メーカーには他県メーカー製品の侵食を許した影響が今も残る=昨年3月12日、鶴岡市
震災後、商品の供給が滞り空になったスーパーの食品棚。現在は完全に回復したが、県内の食品メーカーには他県メーカー製品の侵食を許した影響が今も残る=昨年3月12日、鶴岡市
 東日本大震災後、サプライチェーン(部品の調達・供給網)の寸断や夏場の電力供給制限などにより、急激な落ち込みを見せたが、その後は予想を上回るスピードでV字回復し、震災前の水準に戻っている。その一方、急激な円高や欧州のソブリンリスク(国債の信用不安)問題、タイ洪水の影響なども複合的に絡み合い、業種・企業ごとに状況のばらつきは大きい。

 村山地方の菓子メーカーは、震災から半年近くにわたり包装紙の供給が滞り、売り上げ減少を余儀なくされた。今は原材料の供給も完全に回復したが、震災後の生産縮小に伴い、スーパーなどの棚で自社製品が占めていた割合が減少。供給態勢が元に戻っても、1度、他社製品が入ったスペースはなかなか取り戻せない状況にあるという。担当者は「東北では、お願いすると戻してくれた所もあるが、西日本ではなかなか事情を理解してもらえない地域もある。今後は商品力と販売力で攻めていくしかない」。

 最上地方の自動車部品関連企業は、約半年で完全に震災前の状況に戻ったが、円高で厳しい環境は続いているという。担当者は「今後、円高による海外シフトが強まり国内生産が縮小していくことや、夏場の電力不足、さらには電力料金の値上げによるコスト増への不安は大きい」と話す。

【卸・小売】正常化後、上向き続く
 震災直後の物流停滞や燃料不足、取引先の被災などで商品が確保できす、大きく混乱した卸・小売業。消費者の自粛ムードも重なり、大きく売り上げを落とした企業も相次いだ。

 しかし、生活環境の正常化が進むにつれ、食料や生活必需品、衣料品などを中心に消費は順調に上向き、その傾向は今も続いている。被災地から県内に避難してきた1万数千人分の消費も下支えしている。

 山形市内のスーパーは、昨年5月から現在まで、売上高が前年比で2ケタの伸びをキープしている。寒河江市内の酒卸売会社では、震災から2カ月でほとんど影響はなくなったが「酒の消費の冷え込みはここ数年の流れであり、厳しさは変わらない」という。

 米沢市内で米沢牛関連商品を扱う小売店では、放射性セシウムに汚染された稲わらの流通問題が表面化した昨年7月以降、売り上げが激減。今も3割減の状況が続く。首都圏から訪れた観光客の引き合いやギフト向けなどが減少。商品を納めていた全国大手小売店からも、東北の畜産物は納品をストップされているという。経営者は「牛肉だけが安全でも、他の農産物が不安なら客は買わない。県内の農畜産物すべての安全をPRしていく必要がある」と訴える。

【農林水産】風評に生産者の不安
 福島第1原発事故は、県産農畜産物にも大きなダメージをもたらした。サクランボやモモといった主力果実や牛肉など、風評による価格下落や販売量の減少はそのまま生産農家の所得を直撃。その後、東京電力による損害賠償の支払いも一部で始まったが、影響がいつまで続くのか見通せず、生産者たちの不安は今も続いている。

 寒河江市の青果業者は「特に西日本での引き合いの減少が目立った」。契約農家を抱えているため、特別価格で販売し、前年と同水準の売り上げを確保したが利益は減少したという。置賜地方の農業法人は「いくら自社で安全性を確認し、安全宣言しても消費者の不安はなかなか消えない。この状況が続けば事態は深刻」と語った。
(「県産業界の現状」取材班)
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