東日本大震災

三陸のカキを再び 石巻・養殖事業復旧めざす品野さん

2011年10月19日
大震災で地盤沈下した品野光一郎さんの敷地。土のうで防御しているが、大潮時には連日、海水が迫ってくる=宮城県石巻市渡波
大震災で地盤沈下した品野光一郎さんの敷地。土のうで防御しているが、大潮時には連日、海水が迫ってくる=宮城県石巻市渡波
 目の前で船が沈んだ。施設は全て流された。これまで積み上げてきたカキ養殖の暮らしが一瞬にして無に帰した東日本大震災。「正直、別の仕事を考えたこともあったが、山形のボランティアの支援でここまで復旧できた。あとは突っ走るのみ」。日焼けした顔に笑みを浮かべ、品野光一郎さん(32)=宮城県石巻市渡波=は前を見据えた。

 地震発生時は共同かき処理場にいた。「足元の岸壁に亀裂が入り、パクパクと口を開け閉めするさまを初めて見た」。妻浩子さん(33)に「2人の息子と避難所に行って」と指示、自分は津波に備え船を移動するため海に向かった。

 ■毎週支援に

 品野さん宅は万石浦に面している。万石浦は牡鹿半島の付け根に位置し、外海とつながっている部分はわずか。大自然に守られており、自宅まで移せば大丈夫と考えた。「本当にここまで津波が来んのが?」。自宅前で仲間4、5人と見守っていた時、ごう音が耳を突いた。住宅や船が真っ黒な海とともに次々と押し寄せてきた。養殖施設はあっという間にのみ込まれた。自分の船は、押し波引き波で上下動を繰り返す海に翻弄(ほんろう)され、あっけなく沈んだ。

 「もう駄目だ」。そう思ったのは震災からしばらくたってからだ。「当日は無我夢中で何も考える余裕がなかったが、被害の全容が分かるようになってきて、心が折れかかった」。震災後は土木会社を営む義父の元に身を寄せ、復旧工事を手伝った。「そのまま続けるか迷ったが、自分だけ(海から)逃げるわけにはいかなかった」

 品野さんを支えるのは、山形県社会福祉協議会などが派遣するボランティア隊だ。カキの種は硬い物に付着する性質があり、養殖にはホタテの貝殻を利用する。貝殻に穴を開け、ワイヤでつなぐ「殻差し」は単純だが大切な作業だ。山形隊は9月10日からほぼ毎週、支援に訪れている。「本当は自分たちでやんなきゃと思っていた。本当にありがたい」と品野さん。米沢市から参加した佐藤恵美子さん(52)は「あれだけの被害に遭ってもくじけなかった人のお手伝いができてうれしい」。酒田市の外国語指導助手(ALT)スージー・パイクさん(27)は「日本を助けたかった。人の役に立ててハッピーです」と語る。

 ■30日初出荷

 自宅敷地は震災による地盤沈下で、大潮の時期には連日、床下浸水を繰り返す。「県や市に相談したが、民有地なので何もできないと言われた」。仕方なく自力で土のうを作り周囲に配置。9月の台風15号では土砂が納屋を襲ったが、大潮対策にちょうどいいと「(流出した)土砂を海側に土盛りしてやった」。転んでもただでは起きない。

 「うち(所属漁協)の漁場は北上川の河口の縁にあるので、山の養分が豊富なんだ」。自分が育てるカキについて語る品野さんは誇らしげだ。大津波で奇跡的に残った種を元に、みんなで育てたカキの初出荷は30日。例年より1カ月遅れとなるが「消費者に直接届ける仕組みを作るなど新しいことにも挑戦したい」。仲間と一緒に豊かな海を再生しようと心に決めている。

 (仙台支社・松田直樹)
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