東日本大震災

山折哲雄さん「東京一極集中破らねば」 県ゆかりの著名人・やまがたを思う[15]

2011年04月21日
山折哲雄さん=山形市・山形メディアタワー
山折哲雄さん=山形市・山形メディアタワー
 -山形を経由して、宮城県の沿岸部を中心に被災地を回ったと聞く。

 「大きな船や建物が倒壊した気仙沼の姿に、文明が崩壊していく時の傷痕を実にまざまざと見た思いがした。人間中心主義的な考え方はこの大災害にあってお手上げ。神話的な世界が、近代的な歴史観を切り裂き、その限界を余すところなく暴露したといえる。神話とは、例えて言えば旧約聖書のノアの箱舟の物語。神が地上に大洪水をもたらすと予言し、選ばれた人間だけが救命ボートに乗って助かった。その陰には多くの犠牲者がいた。ヨーロッパの歴史や文明は、生き残りのためには必ず犠牲が伴うという観念に基づいて形成されてきた」

 -日本人もその思想の影響を受けている。

 「福島第1原発事故の現場で命を懸けて働いている作業員がいる。最悪の事態を避けるためとなれば、現場で働く人に危険を冒してもらうかもしれない。古代から生き残り戦略を貫いてきた西欧の人々には、必ずそのような発想がある。日本人も明治以降、生き残りの思想にどっぷり漬かってきた。ところが、日本人は誰かが犠牲になることを納得できない。全員救いたいと願う。それは西洋思想とは別の、仏教に基づく神話が日本人の深層に流れているからだ。現場の作業員が生命的危機にさらされたら全員を引き揚げる。その代わり、放射能汚染は広がるかもしれない。それを全国民で引き受けよう。これが仏教的な考え方だ」

 -日本人の深層に流れる神話とはどのようなものか。

 「法華経の中に『三車火宅(さんしゃかたく)』の物語がある。この世を燃え盛る家、人々を火事に気付かず家の中で無邪気に遊ぶ子供たちに例えた話。放っておけばその火に巻かれて全員が死ぬかもしれない中で、父親がきれいに飾り立てた車が門外にあると言って子供たちの注意を引き、全員を救い出す内容。助からない時も、助かる時もみんな一緒、という考え方だ」

 -日本人は2つの神話の間でジレンマを抱えている。

 「マスコミにも大きな責任がある。普段は西欧的な思想を主張しながら、犠牲の問題を排除している。見て見ぬふりをしているうちに、意識すらしなくなってしまう危うさを感じる」

 -東北の人々がすべきことは。

 「東京一極集中をぶち破らなくてはいけない。東京は外交と防衛、経済は仙台、芸術文化は京都、大阪や神戸は防災と、首都機能を分散することで日本全体を守る。政府の復興構想会議が始まったが、中央と地方の力関係の中で、東北の知事たちが東京への陳情を繰り返すだけになりかねない。必要なのは、東北に新潟も加えた新たな列藩同盟。東京1極集中を改めることができるかどうかが、東北の未来に関わってくる。山形は斎藤茂吉を生んだ。万葉以来の大歌人の歌は、被災者の慰めにもなるだろう。さらに、今あまり省みられることのない思想家大川周明、石原莞爾の考え方は日本の中でもユニークで、見直すべきものがある」

=おわり

 ▽やまおり・てつおさん 宗教学者、東北芸術工科大東北文化研究センター(山形市)顧問。1931年米サンフランシスコ生まれ、岩手県花巻市で育つ。東北大卒。国際日本文化研究センター所長などを歴任。著書に「さまよえる日本宗教」ほか。「愛欲の精神史」で和辻哲郎文化賞。日本の民俗文化を多面的に考察した功績で昨年、第20回南方熊楠賞。
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