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第6部・スーパー公務員の力 (6)東京農大教授・木村俊昭さん

2018/6/30 15:15
「公務員の強みは『信頼』。現場を回って徹底的に話を聴くことが大事」と語る木村俊昭さん=東京・豊島区のホテル

 “元祖スーパー公務員”と呼ばれる人が北海道にいる。小樽市職員時代にガラス工房を誘致しガラスのまちとしてのブランド化を進めるなど、まちづくりで数々の実績を挙げた木村俊昭さん(57)だ。

 その実績が評価されて内閣府、農林水産省などに出向、地方創生の政策立案にも携わった。現在は東京農大教授を務める傍ら、日本地域創生学会会長、地域活性学会常任理事、地域創生リーダー・プロデューサー人財塾長、スーパー公務員塾長などとして、年間100回以上の講演や現地アドバイスに、全国を飛び回っている。

 多忙な時間を割いてもらい、話を聞いた。木村さんは、公務員に求められる役割として「マチをどうしたいのか、というストーリー、台本づくり」を挙げた上で「公務員の強みは信頼してもらえること。それを生かして徹底的に現場を回り、じかに住民の話を聞くことが大事だ」と強調した。

 ―小樽市職員時代に心掛けていたことは。

 「『産業、歴史、文化を徹底的に掘り起こし、磨きを掛けて、世界に向けて発信できるマチづくり』と『未来を担う子供たちの愛着心を育む人づくり』の2点。理論先行ではなく実学現場主義を貫くこと、部分・個別ではなく全体の最適化を図るということも意識していた」

 ―木村さんの入庁当時と現在で、公務員を取り巻く環境は変化したか。

 「職員数が年々削減されるのに仕事量は変わらない。だから本当は重要度が高いはずの仕事よりも、イベントの手伝いなど軽微でも緊急度が高い仕事に追われるようになっている。前例踏襲を改め、仕事環境の改善と整理が必要だ」

 ―「地方創生」が叫ばれる中、地方公務員の果たすべき、あるいは期待される役割とは。

 「物産展といったイベントも大事だが、本来やるべきなのは地元の産業を育てるために行政がどうお手伝いできるのかというストーリー、台本づくり。しかし現実には総合計画や総合戦略が事業の羅列になってしまい、誰が主体で誰と一緒にやるのか、といったストーリー性がないケースが多い」

 「大事な指標がないこともある。例えば交流人口は多ければ多いほどいいかというと、鎌倉などは観光客が増えすぎて大渋滞になっている。どのぐらいが適正か、という台本をつくるのが行政。企業誘致や起業も地元の産業を強くするものでなくてはいけない。そのためには付加価値額の高い基幹産業を中心に回って、希望を聞き取る必要がある。企業が民間相手に自社の戦略を語ったりしない。それを聞き出せるのは、最初から信頼関係がある行政だから」

 ―公務員なので希望しない部署に配置される場合もある。

 「本業とライフワークを分けて考えるべきだ。私はマチづくりと人材育成がライフワークだが、それが本業とつながるとは限らない。でも私自身、納税課時代に、どの企業が好調でどこが厳しいとか、マチづくりにとって大事なことが分かった。どの部署でも勉強になることは必ずある。本業は本業としてやり、土日はライフワークに充てればいい。そうすればモチベーションも上がる」

 ―日本地域創生学会を創設した狙いは。

 「『(仮称)地域創生士』の育成を目指している。大学院と連携し、地域を守る熱意を持っていても、やり方が分からないという人を対象に、海外との連携も含め実践できるようなプログラムを考えている。既にだいぶ問い合わせをもらっている」

 ―公務員にとって仕事のやりがいとは。

 「公務員は黒子役だが、仕事を通じて地域の皆さんの笑顔、感動と感謝に接することができる。その瞬間にやりがいを感じる」

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