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第5部・高校生と共に (2)置賜農・豆ガールズ

2018/5/20 11:57
江本一男実習教諭(左)の指導を受け、朝市「こまつ市」で提供する紅大豆キーマカレー丼を試作する食料環境科の3年生=川西町・置賜農業高

 川西町の置賜農業高は「地域を支える人財の育成」を教育目標の一つに掲げており、生徒の地元定着率の高さが特徴だ。今春卒業で就職した生徒73人のうち、県内就職者は63人(86.3%)、置賜地方での就職者は55人(75.3%)に上る。大学や専門学校に進学した生徒が地元に戻る割合も多いという。

 同校では、生徒が実習で手掛けた農産品を販売するチャレンジショップの運営、同町出身の作家井上ひさしさんにちなんだまち歩きツアーの開催など、地域に根差した課題解決型の学習に力を入れており、そうした取り組みが地元への愛着につながっている。

 課題研究の中で最近、脚光を浴びているのは「豆ガールズ」の活動だ。町特産の紅大豆などの加工品を次々に開発、小学生向けの食育活動も展開しており、2017年度はやまがた公益大賞グランプリ、総務省のふるさとづくり大賞総務大臣賞に輝いた。今後は町内の女性農業者の結集に向けた取り組みを加速させようとしている。

 豆ガールズの“正体”は食料環境科食品コースで課題研究テーマ「6次産業」を選択している2、3年の女子生徒だ。2018年度は2年生7人、3年生11人の計18人が豆ガールズとして活動に取り組む。授業を担当している江本一男実習教諭(64)はJR羽前小松駅の管理運営などのまちづくりを担うNPO法人「えき・まちネットこまつ」の理事長という顔も併せ持つ。

 江本教諭は2年間に及ぶ課題研究の意義について「高校生は地域の大切な“人財”。自分が住んでいる地域の特質や歴史を理解した上で、そこに横たわっている課題を知り、それを解決していく力と、地域人としての生き方も身に付けてもらいたい」と強調する。

 豆ガールズプロジェクトは「豆のかわにし」のPRにつながる特産品を開発しようと15年度に始動した。16年度は、生徒たちが豆の名前や栄養、栽培、調理法などを学び、それを紙芝居やかるた、すごろくなどにして幼児や小学生に伝える食育活動「豆育」を展開。子ども向けの豆料理教室も開催した。

 17年度は、豆料理教室で評判が良かった「紅大豆キーマカレー」を第1回ふるさと自慢スクールコンテスト2017に出品し、最優秀賞を獲得。これがご当地レトルトカレーなどを扱っている後藤屋(高畠町)の目に留まって今年3月に商品化され、既に千個以上を売るヒット商品となった。

 第2弾の市販品として4月20日には紅大豆とつや姫を使ったジェラート「百恋(ひゃっこい)」を売り出し、好評を得ている。

 こうした活発な活動の中にあっても、江本教諭は一歩先を見据えている。「川西町や小松地区交流センターなどの支援を受け、高校生の活動は高い評価を頂いているが、大人を巻き込んだ地域活性化や共創には、いま一歩つながっていない。置農生が旗振り役となり、大人と一緒に大きなうねりを創り出していきたい」

 その具体化に向けた次のステップが、置農の生徒とOGを含めた農業系女子の力を結集しようという「ノケジョプロジェクト」だ。昨年12月に準備会を開き、今月31日に開く実行委員会には町内から10人以上のノケジョの参加を見込む。6月10日には「南東北ふるさと食文化交流会」を町中央公民館で開き、山形、宮城、福島3県の関係者が伝統料理を持ち寄り、置農生を交えて情報を交換する。

 豆ガールズとして1年間、校外での活動を重ねてきた3年生は頼もしさを増している。新野咲さん(18)=長井市=と渋谷日果利さん(17)=米沢市=は「川西町の食文化や歴史を学ぶことで、自分が住む地域についても深く知りたいと思うようになった」「課題研究に参加して異なる年代の人と交流することで、コミュニケーション能力が高まったと思う」と話す。

 新野さんは経営学系の大学、渋谷さんは管理栄養士の資格取得を目指して栄養系大学への進学をそれぞれ希望しており、新野さんは「食品や経営について学んだ後、将来は地元で6次産業の活性化に携わりたい」と夢を描く。

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