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第2部・雪と暮らす 除雪の先進技術活用(1)

2018/2/21 10:35
市都市整備課に設置された除雪車運行システムの端末。車両の現在地、移動ルートなどが把握できる=新庄市役所第2庁舎

 連日のように降る雪と格闘する県民。多くの家庭にはスコップ、スノーダンプといった道具が備わり、豪雪地では除雪機を購入している世帯も目立つ。だが張り巡らされた公道の除雪は国や県、市町村に配備された大型車両の力を借りるしかない。近年はその技術やシステムが改善され、住民の暮らしやすさの向上が図られている。

 「現在、市内に出動している除雪車両は30台です」。新庄市都市整備課の職員が課内に置かれた大型画面の除雪車追跡マップを見ながら上司に伝えた。各車両の種類、委託業者名、作業内容なども一覧できる。同市が今冬導入した運行管理システムだ。

 車両の位置情報はインターネットで市民も閲覧でき、作業状況のリアルタイムでの“見える化”が実現した。閲覧が習慣付けられれば、市民の不安解消にもつながると期待されている。

 新庄は豪雪地とあって、市には降雪時に「除雪車は出ているのか」「ここには何時ごろ来るのか」といった問い合わせが多く寄せられる。近年では150件に達した日もあった。市はその都度、委託業者に確認を取り、市民に回答するという煩雑な作業を行っていた。また2015年には市民団体「雪とくらしを考える連絡協議会」から「道路除雪の情報提供の充実」などを求める答申を受けた。

 そこで市は詳細な運行情報の提供と“見える化”で市民の不安解消に努め、除雪の効率化とコスト削減も図りたいと、NDソフトウェア(南陽市)が開発したシステムを導入した。事業費は約900万円。ほかに県内では鶴岡、寒河江、白鷹の3市町で同社のシステムを使用している。

 市内3カ所に設置する除雪自動通報装置が未明に降雪量10センチを観測すると、その区域の担当運転手に出動要請メールが送られる。通知から30分以内に作業はスタートし、現在地は車両に搭載した衛星利用測位システム(GPS)機能付きスマートフォンを通じて市庁舎の端末に表示され、市専用サイト「雪国生活」上で市民にも公開する。

 画面で各車両の位置、台数が分かり、自宅近くに来るおおよその時間が推測できる。直近の移動ルート、過去5日間の作業状況も調べられる。市は一元管理によって、作業が遅れている箇所に応援車両を送り込むといった指示も出すことが可能になり、スムーズな作業と効率化が図られた。

 今冬は36業者が委託を受け、計127台を操って総延長約270キロをカバーしている。システム導入前は、業者がタコメーターの記録を市に提出し、それを基に市職員が除雪費を確定する作業を行っていたが、導入後は一切不要となった。これもメリットとして歓迎されているようだ。

 導入前と比較すると、全車両が出動した場合で一日当たり10%強の経費が削減できるという試算が出ており、シーズンを通せば相当額の除雪費軽減が図られることが期待される。

 車両追跡マップのアクセス数はこの1カ月で約5600に達し、市民の関心の高さをうかがわせた。逆に“見える化”効果で、除雪車出動に関する問い合わせは減少しているという。

 歓迎の一方で、目視を重視する姿勢も大事にしてほしいという声もある。道路整備課の庄司誠二道路維持管理室長は「降雪量は地域で差がある。出動に関しては業者側の自主判断も尊重し、よりきめ細かい除雪を心掛けていく」と話す。除雪自動通報装置の増設や、車両到着予定時間が分かる時刻表の作成などが今後の検討課題で、端末画面の機能向上も進めていく。

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