やまがた観光復興元年

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やまがた観光復興元年

第5部・結ぶ[6] 地域間の連携

2014/6/4 10:01
湯野浜を舞台にしたノルディックウオーク。上山のクアオルトウオーキングと組み合わせたツアーが検討されている=昨年6月、鶴岡市

 かみのやま温泉(上山市)と湯野浜温泉(鶴岡市)がタイアップし、ツアー企画づくりに取り組んでいる。山と海の違い、ウオーキングの拠点という共通点を生かしたユニークなコラボレーション。県内での地域間連携の先進事例として注目されそうだ。

 江戸時代に両温泉は、福島県の東山と並び「奥羽三楽郷」として出羽三山の参詣客でにぎわった。「互いの温泉とウオーキングで『健康と美』、山菜と海産物、ワインと日本酒の『食』の対比も魅力的」と上山市の石井隆観光課長(59)はキーワードを挙げて解説する。起源をたどれば「傷を癒やしたのは、かみのやまは鶴で湯野浜は亀。縁起の良さで決まりです」。

 上山市観光物産協会からのラブコールに、上山市が展開するクアオルト(保養・療養地)事業に関心を持っていたという湯野浜温泉観光協会の阿部公和会長(44)は「海風は気管支系にいいと言われ、クアオルトの理念に合致するかも」と前向きだ。双方の中核旅館がリードし、協会同士のプロジェクトに仕上げる方向で検討されている。

 蔵王で朝日に輝く新緑を眺めながらの健康ウオーキングで一日が始まり、夕日に染まる海を見ながらノルディックウオーキングを楽しむ。日中は出羽三山巡りか、今ならサクランボ狩りも。間に挟むメニューには事欠かない。

 首都圏の旅行代理店に提案し、秋にはモニターツアーを実施したい考え。酒や旬の食材をやりとりする構想もある。「海と山のダイナミックな展開が県内でできる。ウィンウィンの関係になるはず」。石井課長は言い切る。

「きてけろくん」の見送りで庄内に向けて出発した臨時列車。来月は逆の順路で運行される=昨年7月、米沢市・JR米沢駅

 置賜、庄内両地域の観光連携が始まったのは2年前。東日本震災で落ち込んだ人出を復活させる狙いだ。外ばかりに向けていた目を内に転じると、山と海、牛肉と豚肉など風土や食文化の違いが今更ながらに見えてきた。互いの観光資源は魅力的に映った。「タッグを組めば勝負になる」と関係者は意を強くした。

 行政と観光関係者からなる庄内観光コンベンション協会、山形おきたま観光協議会は2012年10月、最初の交流会を開いた。山形デスティネーションキャンペーン(DC)に向け連携は深まり、13年7月には鶴岡市で「観光連携に関する決意表明」を宣言。11月には米沢市で周遊プランを提案し合った。

■計220の素材・事業

 双方が持ち寄った観光素材・事業は計約220。互いの地域の客を受け入れるエリア交流プラン、首都圏客が両地域を楽しむ連泊プランを発表し合った。羽黒山の午(うま)歳御縁年、共通入館券「米沢観(み)るパス」での上杉文化施設巡り…。DCイベントを取り込んだ魅力的なプランが出そろった。

 しかし、まだツアーの商品化には至っていない。スピード感がないとの指摘もあるが「置賜の食は期待してなかったけど、ジンギスカンやワインは意外な発見だった。互いの良さを確認し合いながらの歩みは今後生きてくる」と庄内コンベンションの佐藤あゆみ事務局次長(50)。

■課題はDCの後

 DC期間中の7月5日、昨夏とは逆に新庄から陸羽西線で酒田に向かい、羽越本線と米坂線で米沢に至る臨時列車の運行が決まった。庄内側の一行も乗車、米沢市で4回目の交流会を持つ。いよいよ商品化の検討、プロモーション準備の段階に入る見通しだ。

 県内の関係者にとって、共通かつ最大の課題はアフターDC。置賜と庄内の連携の成否が鍵を握る。「DCで踏み出した勢いを継続して次は最上」と山形おきたまの内藤文徳副会長(66)。庄内コンベンションの小林正弘専務理事(55)も「物理的にも文化的にも一番遠い地域がくっつくことで、連携の輪は全県エリアに加速する」。県内じゅうに連携軸を構築していこうとの思いは同じだ。

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