山形にフル規格新幹線を

交流人口(2) 脚光浴びるインバウンド

2017年08月02日
チャーター便で韓国から訪れた観光客。交流人口拡大は地方の重要な施策になっている=今年7月、酒田市・庄内空港
チャーター便で韓国から訪れた観光客。交流人口拡大は地方の重要な施策になっている=今年7月、酒田市・庄内空港
 小泉政権時代の2003年、観光がクローズアップされた。日本ブランドの世界への発信を掲げた政府の「観光立国アクション・プログラム」は、地域にある魅力を向上させて観光に生かす「1地域1観光」運動を盛り込み、10年までに海外からの観光客を1千万人とする政府目標を設定。目標には届かなかったが12年以降は年々上昇し、昨年は2400万人を突破した。

 観光振興は世界的な風潮にある。世界の国内総生産(GDP)や雇用環境、輸出額で一定の割合を占め、観光需要は右肩上がり。アジアは成長分野との予測もある。20年東京五輪・パラリンピックという世界的な大会を控え、政府も観光を成長戦略の柱の一つと位置付ける。

 訪日外国人旅行者数は15年、日本からの海外旅行者数を45年ぶりに上回ったという。本格的な人口減少社会に突入した昨今、全国の自治体はインバウンド(海外からの旅行)の力を必要としている。

 インバウンドがなぜ、脚光を浴びているのか。観光が経済に及ぼす分野は交通、宿泊、飲食、買い物と多岐にわたる。15年国勢調査で日本の総人口は初めて減少に転じ、近現代の日本が経験したことのない時代に突入した。国内人口の偏在で、人口流出が著しい地方は、定住人口減少に伴う地域経済の目減り分を、交流人口で補おうとしているからに他ならない。

 インバウンドがもたらす経済効果の分析がある。東北観光推進機構の清野智会長が今年、山形市内で開かれたセミナーでその内容を紹介した。定住人口1人当たりの年間消費額は125万円(2014年)。2015年の旅行消費額と旅行者数を元に試算すると、訪日外国人旅行者の消費額は1人当たり17万7千円で、国内旅行者は宿泊が4万9千円、日帰りが1万6千円。定住人口が1人減少した場合、交流人口が何人必要になるのか。外国人旅行者は7人分、国内旅行者は宿泊で26人分、日帰りで78人分に相当する。

 15年国勢調査の本県総人口は112万3891人。10年調査より4万5033人減少した。562億円相当の消費が失われた換算になる。国内旅行の日帰り客で定住人口の減少分を補完しようとすれば、年間351万人を呼び込まなければならない。インバウンドに置き換えれば約31万人分。県は20年に外国人旅行者を30万人(15年・10万人)、観光消費額を150億円(同・28億円)とする目標を掲げる。

 そのインバウンドの消費動向が変化しつつある。かつて、中国人観光客が日本製品を大量に買い求めた「爆買い」は終わりの時を迎えつつある。観光庁が発表した今年上半期(1~6月)の推計では、1人当たりの消費額が前年同期に比べて6.7%減の14万9248円。「爆買い」が沈静化し、格安航空会社(LCC)で訪日する韓国人客の短期滞在が増えたことが一因とみられている。

 訪日外国人旅行者にとって、価値のある商品が提供されるのか。日本滞在期間中に得られる体験がいかに魅力的なものなのか。求められるインバウンドの吸引力が移ろいでいる。東北は自然や歴史、文化、食など一つ一つの観光資源のポテンシャルが高いが、足を運ぶ訪日外国人旅行者は全体の1%程度に過ぎない。

 東北が「遠い」と感じる背景には、東京電力福島第1原発事故に伴う風評被害がいまだに払拭(ふっしょく)されていない現状がある。さらに、大きな要因となっているのが脆弱(ぜいじゃく)な交通ネットワーク。新潟県を含む東北エリアの面積は国土の2割を占め、北海道に次いでブロック別で全国2位の広さ。東北の社会インフラ整備は大都市圏や太平洋側と比べ、後回しにされてきた。

 短期滞在型に変わってきたインバウンドの恩恵を東北全体が享受するには、滞在期間に対応した高速交通手段を求めるのが必然だ。北海道南部を含めた東北圏の回廊を形成する奥羽、羽越両新幹線は、東京依存ではない新たな価値を東北全体にもたらすだろう。

(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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