快適性(上) グランクラス乗車ルポ~山形にフル規格新幹線を|山形新聞

山形にフル規格新幹線を

快適性(上) グランクラス乗車ルポ

2017/5/21 11:57

 乗客が新幹線に求める要素として「速さ」と「安全性」に加え、欠かせないものが「快適性」だ。さらに突っ込んだ言い方をすれば「乗り心地」だろう。全国で新たなフル規格新幹線の路線整備が進み、合わせるかのように新型車両の開発も進んでいる。JR東日本管内も同様だ。

 同社のフル規格新幹線にあり、ミニ新幹線にはない車両がある。グリーン車よりもワンランク上の「グランクラス」。航空機のファーストクラス並みのサービスと快適性をうたい、2011年3月にデビューしたE5系の東北新幹線「はやぶさ」から導入された。

 グランクラスの車両は片側1列、もう片側に2列が並び、全18席ある。座席幅は52センチ、前のシートとの間隔は130センチで、E3系の山形新幹線つばさと比べると、座席幅は6.5センチ、シート間隔は32センチも広い。専用のアテンダントを配置し、飲み物の提供などきめ細かな車内サービスを行う。同じくフル規格の北陸新幹線にも導入済みだ。

 現時点でグリーン車が“最上級”となるミニ新幹線に比べ、フル規格はどこまで進化したのか。東京―新青森間で乗車体験を試みた。乗車時間はつばさの山形―東京間とほぼ同じ約3時間。

専用のアテンダントを配置したグランクラス。上質な空間とサービスが快適性を向上させている=2011年2月

 5月中旬の平日。午前10時20分前、東京駅のホームにグリーンを基調とした車両が滑り込む。豪華な内装やシートは写真で見たことはあるが、乗車するのは初めて。わくわくしながら足を踏み入れた。

 新青森行きの東北新幹線はやぶさの「グランクラス」に乗り込んだ。落ち着いた赤色のじゅうたんを歩き、窓際の座席へ。アイボリー調の革張りシートは適度な硬さで座り心地がいい。電動リクライニングはフットレストとも連動し、ボタン一つでマッサージチェアに座っているような体勢にしてくれた。

 平日の日中のため、乗客は数人だった。出発から間もなく「皆さまの旅のお手伝いをさせていただきます」と女性アテンダントが自己紹介し、温かいおしぼりを一人一人に手渡す。座席に用意されたスリッパに履き替え、体をシートに預けると、すぐにでも眠ってしまいそう。車内は比較的静か。窓と座席の間にスペースがあり、トンネルに入る際の「ドン」という音で驚くことはない。

 軽食、アルコールを含めた飲み物はサービス。10種類以上のドリンクメニューの中から炭酸飲料を頼むと、氷入りのグラスで持ってきてくれた。軽食は和食と洋食から選択でき、和軽食はこごみの天ぷらなど季節を感じさせるメニュー。アテンダントは肘掛けのボタンを押すと席まで来てくれる。備え付けの新聞や、ドリンクのお代わりを何度かお願いした。まさに至れり尽くせりの状態だった。

快適な体勢で座ることができるグランクラスのシート(JR東日本提供)

 終始くつろいだまま新青森駅に到着。疲れるどころか、リフレッシュできた。約3時間の乗車時間も短く感じたほど。富裕層をはじめ、できる限り体に負担をかけずに移動したいという高齢の旅行者らには重宝がられると思った。帰りははやぶさの普通車に乗り、仙台駅経由で山形に戻った。

 グランクラスに乗る数時間前、つばさのグリーン車で東京に来た。普段乗車する普通車に比べれば格段に心地良かったが、サービスを含めたグランクラスの快適性は格が違った。今回の取材で山形―東京間の乗車料金は1万4560円、東京―新青森間は2万7110円。営業キロで割ると、つばさのグリーン車が1キロ当たり40.4円に対し、はやぶさのグランクラスは1キロ当たり37.9円で割安感もある。

 移動を含めた全行程が旅の醍醐味(だいごみ)ともいわれる中、移動手段の快適性は観光面にも直結する。「グリーン車のさらに上があることでより幅広い客層が獲得できる」と青森観光コンベンション協会の宮田幸雄企画事業部長。青森市交流推進課の越谷英樹副参事も「ストレスフリーに来てもらえるメリットは大きい」と指摘した。

 JR東日本広報部はミニ新幹線へのグランクラス導入について「具体的な計画はない」と説明。一般論とした上で「スペースを確保するためには座席数が減り、導入には輸送力確保などが課題になる」とした。もともとフル規格に比べて車両が小さいミニ新幹線。快適性の向上には、限界がありそうだ。

(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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