山形にフル規格新幹線を

並行在来線(1) 経営分離条件の一つ

2017年03月31日
 フル規格新幹線は、基本的な確認事項がそろって着工が決まる。整備新幹線問題検討会議が2009年に決定した「整備新幹線の整備に関する基本方針」は▽安定的な財源見通しの確保▽並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意―など5項目を提示。着工に必要な「着工5条件」の中で、巨額の整備費確保とともに大きな課題となるのが、通勤通学など住民の足に直結する並行在来線だ。

 並行在来線は、整備新幹線と並行する形で運行している在来線を指し、1990年、政府・与党の申し合わせでルール化。現在も踏襲されている。経営分離は沿線の道府県、市町村全ての同意が必要で、東北(盛岡以北)と九州、北陸、北海道新幹線では、並行在来線の運営を第三セクターなどが担っている。

 国土交通省鉄道局は、87年の分割・民営化直前に旧国鉄の累積債務が25兆円を上回ったことが教訓だと説明。開業した新幹線に利用者がシフトし、既存路線がJRの過度な負担となるとして「その負担を負わせないよう(並行在来線を)JRから切り離し、地元で受けてもらう形になる」と話す。

 具体的にどの路線、どの区間を経営分離するかは、着工決定後の協議になる。整備計画前の「基本計画」段階にある奥羽、羽越両新幹線にとって、並行在来線の議論はまだ先のことだが、いずれ避けられない課題となる。

 経済発展や生活圏の拡大、地域振興を目的に、全国に新幹線網を整備する全国新幹線鉄道整備法が1970(昭和45)年に成立。北陸、北海道両新幹線などは72(同47)年に、奥羽、羽越両新幹線は73(同48)年に、それぞれ基本計画に位置付けられた。「整備新幹線の整備に関する基本方針」の「着工5条件」に当てはまるのは「昭和47年組」と「昭和48年組」の各路線。東海道・山陽、東北(盛岡以南)、上越の各新幹線は該当しない。

 2010年に開業の東北(盛岡以北)、11年の九州、15年の北陸、16年の北海道の各新幹線は、一部区間を除いて開業時に並行在来線がJRから経営分離され、第三セクターや地方自治体などが運営している。国土交通省によると、経営分離に伴う廃線はなく、運営会社は現在8社。一般に、経営分離後は運行本数が減少し、運賃が上昇。JR運営当時と比べ、サービスレベルは低下する。国は固定資産税軽減の税制特例措置などで支援しているが、国交省は、運営各社の経営状況は厳しいとの認識を示す。

 奥羽、羽越両新幹線の着工が決まった場合、奥羽本線、羽越本線が並行在来線に該当する可能性は高い。国交省によると、鉄道・運輸機構がフル規格新幹線のルートを、JRが停車駅を決めた後、全ての沿線自治体が並行在来線の経営分離に同意し、JRが提示した分離対象の路線、区間の議論が始まる。

 新幹線と在来線が相互乗り入れする「新幹線直行特急」の山形新幹線は、沿線市町に停車することで、各自治体が高速交通の恩恵を享受してきた。各自治体は駅を基軸にしたまちづくりを進め、現在の市街地を形成している。フル規格新幹線の実現後は「停車駅」と「通過駅」とに区別され、並行在来線の維持・運営という新たな課題を沿線自治体に突きつける。

 並行在来線を入り口論にし、さらなる高速交通網整備への道筋を閉ざすことは、人口減少や少子高齢化が深刻化する本県全体にとって有意義なものではない。具体的な対象区間がない段階で議論を深めることは難しいが、フル規格を目指す上で、沿線自治体の共通認識を醸成する必要がある。


 フル規格新幹線の開業は、並行在来線の経営分離を伴う。開業から2年を迎えた北陸、開業1年の北海道両新幹線の現状と課題を踏まえ、奥羽、羽越両新幹線の整備を見据えた並行在来線の課題を考察する。

(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

■整備新幹線の整備に関する基本方針
1.安定的な財源見通しの確保
2.収支採算性
3.投資効果
4.営業主体であるJRの同意
5.並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意

【並行在来線】
    社名        区間     営業距離

青い森鉄道 青森県   目時―青森  121.9キロ
IGRいわて銀河鉄道  盛岡―目時   82キロ
しなの鉄道      軽井沢―篠ノ井 65.1キロ
            長野―妙高高原 37.3キロ
肥薩おれんじ鉄道    八代―川内  116.9キロ
えちごトキめき鉄道 妙高高原―直江津 37.7キロ
           直江津―市振  59.3キロ
あいの風とやま鉄道   市振―倶利伽羅 100.1キロ
IRいしかわ鉄道  倶利伽羅―金沢  17.8キロ
道南いさりび鉄道   木古内―五稜郭 37.8キロ

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