山形にフル規格新幹線を

4県知事・副知事シンポから(下) 整備実現へ重要なのは

2017年02月16日
奥羽、羽越両新幹線の意義をテーマに講演する波床正敏大阪産業大教授=11日、山形市・ホテルメトロポリタン山形
奥羽、羽越両新幹線の意義をテーマに講演する波床正敏大阪産業大教授=11日、山形市・ホテルメトロポリタン山形
 「奥羽・羽越新幹線の意義を考える」と題し、講演した波床(はとこ)正敏大阪産業大教授は、奥羽、羽越両新幹線実現のメリットを「沿線各地の産業立地条件が向上し、有事のリスク分散になる」「東北と西日本を結ぶ大動脈になる」などと指摘した。整備実現には、沿線自治体間の政策調整が重要だと強調した。以下は講演要旨。

 新幹線は時速260キロの高速度で走り続けることが最も大きな特徴だ。線路の曲線や勾配は在来線に比べて緩やかで速度が落ちない。他路線との平面交差や踏切もないため、安全性が高い。雪対策として線路をかさ上げするなどの工夫があり、線路が雪で埋まらない軌道構造となっている。これらは山形、秋田のミニ新幹線では実現できていない。

 奥羽新幹線には課題がいくつかある。まずは全国一の難所である福島―米沢間の急勾配、急曲線をいかに克服するか。単線区間のため、通勤通学列車の影響による遅れの積み重ねで信頼性が下がっている。踏切もまだ所々にある。

 整備手法を比較すると、フル規格は非常に高性能で信頼性は高いが、1キロ当たり50億~100億円の費用がかかる。軌道幅を変えるミニ新幹線は速度が遅く、大雪や大雨による遅延が生じる。新幹線サイズの橋やトンネルを建設し、後に新幹線化するスーパー特急もあるが、時速140キロほどだ。速度と費用面、信頼性の条件を満たす新たな整備手法を開発することが理想だが、今後の課題となっている。

 新幹線が開通することで駅周辺がどうなるか。他県の事例を見ると、開通後にショッピングセンターや大型電器店、ホームセンターなどが立地するケースがある。開発は進むが「ここに立地しなくてもいいのでは」という結果になる可能性がある。造成地を用意しても自動的にビルが林立するわけではない。「そこで何をするか」という政策が重要になる。

 両新幹線が持つ国土計画上の意義を考えたい。奥羽新幹線は沿線各地の産業立地条件が向上し、有事のリスク分散になる。東日本の南北軸が多重化され、沿線都市との人的交流も多様化する。羽越新幹線も同じく沿線の利便性が向上。首都圏を経由しない経路が確保され、西日本とを結ぶ大動脈になる可能性がある。

 フル規格化の実現に向けては経済合理性とナショナルミニマム(国民生活の最低保障)の観点を重視したい。全国的な取り組みで教訓がある。北陸新幹線は敦賀―大阪間の路線を巡って沿線府県の間で意見が割れ、経済合理性以前の議論となっている。四国新幹線では沿線各県それぞれに思惑があるが、今のところ瀬戸大橋優先経由案で方向性を統一し、うまくいっている。関連自治体、機関の政策調整は重要だ。

 フランスの高速鉄道TGV、ドイツのICEは郊外に高速新線を造り、駅の近辺は在来線を使う手法でコストダウンを図っている。車両は小型だが高速走行が可能で、山形、秋田とほぼ同じ手法だ。ICEではフライブルク―バーゼル間の60キロ区間にトンネルを掘ることで5分短縮するといったバイパス工事を繰り返し、行くたびに速くなっている。

 仏独のように、ミニ新幹線を段階的にフル規格化するという作戦もある。峠のバイパス化など難所部分の改良を優先的に行い、準備が整った区間から新線を建設する。当面は駅や線路はそのまま使用する。場合によっては踏切を除却して高架駅を建設し、そこに道路財源を活用する手法もあり得るかもしれない。(「山形にフル規格新幹線を」取材班)

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