山形にフル規格新幹線を

4県知事・副知事シンポから(中) 交流人口拡大への期待

2017年02月15日
フル規格新幹線のシンポジウムに各方面から参加者が詰め掛けた=山形市・ホテルメトロポリタン山形
フル規格新幹線のシンポジウムに各方面から参加者が詰め掛けた=山形市・ホテルメトロポリタン山形
 山形、秋田、福島、新潟の沿線4県の知事、副知事が奥羽、羽越両新幹線の実現効果として、一致した期待が「交流人口の拡大」だった。東北・新潟県と、北海道、北陸間の新幹線ネットワークが形成されることで、東京起点以外の多様な人の流れが生まれる。人口減少が深刻化する地方にとって、フル規格新幹線の整備が有効との認識をあらためて共有した。

 「このままでは、『地方創生』という言葉がむなしくなる」。佐竹敬久秋田県知事はこう語り、太平洋側に比べて高速交通網の整備が遅れている日本海側の現状を嘆いた。人口減少が加速度的に進む地方において、観光やビジネスで外部から人を呼び込むことは活力を維持するために欠かせない。特に観光は宿泊、小売り、飲食など幅広い業種に波及効果がある。

 東北地方の人口は、軒並み減少傾向にある。2015年の国勢調査によると、本県の人口は112万3891人で、前回の10年調査から約4万5千人減少。秋田県は5年間の減少率が全国で最大の5.8%で、102万3119人だった。17年夏にも、100万人の大台を割るとの予測がある。

 人口減少に歯止めがかからない中、政府は経済成長戦略として、インバウンド(訪日外国人旅行者)の数を20年に4千万人、30年には6千万人とする目標を掲げた。観光庁がまとめた15年の都道府県別の外国人延べ宿泊者数は、東北の合計が60万7890人。全体の6561万4600人の1%未満で、「ひとり負け」の状態だ。高速交通網の脆弱(ぜいじゃく)性が一因となっているのは間違いないだろう。

 こうした現状下で4県の知事、副知事は、新たなヒトとモノの流れを創出する広域観光圏の可能性に触れた。北海道新幹線開業後は東北・北海道の周遊性が一段と高まった。従来と異なる「東京を起点としない」周遊エリアの形成につながる可能性もある。

 具体的な効果が現れているのが、上越、北陸両新幹線が通る新潟県。寺田吉道副知事は、上越新幹線開業後に越後湯沢のスキー客が倍以上の年間800万人に増えたとのデータを示した上、北陸新幹線開業後は関西圏から佐渡島などへ向かう新たなルートができているとした。「奥羽、羽越新幹線ができれば、より大きなスケールで人を呼び込める。大阪起点でもバリエーションが増える」。新潟を窓口とした東北と関西との交流拡大を展望する。

 産業振興の面でも期待感は高まる。佐竹知事は「新幹線は街の真ん中に入ってくる」と表現し、2次交通の整備が必要な空路との違いを説明。企業誘致や観光誘客の面では、点ではなく線としてつながる新幹線の優位性が高いとの考えを示した。吉村美栄子知事は本県で成長著しい有機ELやバイオベンチャーを挙げ、「若い研究者にとって心理的な距離が短くなり、山形まで通勤することも可能になる。技術革新も進むのではないか」と語った。

 奥羽、羽越両新幹線の整備は、東日本大震災を教訓とした新たな国土軸形成の観点からも意義がある。畠利行福島県副知事は高速交通網のリダンダンシー(代替機能)の重要性に関し、「災害時は物流ネットワークはもちろんだが、人の移動手段として複数のルートを確保することの重要性を痛感した」と語った。

 被災地支援で本県は、ヒト、モノの支援ルートを担った。吉村知事は日本海側が果たした補完的役割を踏まえ、「日本全体の発展が大事。太平洋側が大きな被害を受けた経験を基に、日本海側の国土軸をしっかりと整備しないといけない」と強調した。

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