連載企画

朝日連峰縦走

■山に教わる“人生訓” 朝日連峰縦走<最終日>
2008年08月03日 掲載
大鳥小屋の近くにある七ツ滝。岩を打ちながら激しく流れ落ちる様は壮観=2日午前9時19分
大鳥小屋の近くにある七ツ滝。岩を打ちながら激しく流れ落ちる様は壮観=2日午前9時19分
 朝日連峰縦走最終日となった2日、一行がまず向かったのは大鳥小屋近くにある七ツ滝。大鳥池を流れ出した水が、岩壁から豪快に流れ落ちる様子を味わうことができる。ただし、小屋からの山道はほとんど廃道。今回ガイド役を務めた県山岳連盟会員の高橋実さん(51)=酒田市=がやぶの中をくぐり、急斜面ではザイルで安全を確保しながら案内してくれた。しばし見とれた景観は、簡単にはアクセスできないのがもったいないほど。

 後はひたすら沢沿いに下り、登山口の泡滝ダムに到着。缶ビールとコーラで、6日間の山行の無事を喜び合った。

 衛星携帯電話や発電機を背負い、縦走取材をサポートしてくれた4人の学生に感想を聞いた。「地上では味わえない心の豊かさを実感できるのが登山の魅力。それに山で飲む酒は格別だった」と語るのは、山形大ワンダーフォーゲル部OBの金野伸さん(23)=工学部4年、米沢市。同OBの須藤宏さん(24)=農学部4年、鶴岡市=は「山は自分と向き合えるところがいい。もっと若い人にも朝日に来てほしい」。同大自然に親しむ会の高橋和也さん(22)=工学部3年、米沢市=は「日常の慌ただしさを忘れ、無心になって登山を楽しんだ。山で食べる食事はおいしかった」と振り返った。同会の虎谷洸(たけし)さん(21)=農学部3年、鶴岡市=は「もっといろんな人に縦走登山の楽しさを味わってほしい」と話した。

七ツ滝に向かう道は草木に覆われた急斜面。縦走隊はザイルを使いながら慎重に歩を進めた=2日午前9時13分
七ツ滝に向かう道は草木に覆われた急斜面。縦走隊はザイルを使いながら慎重に歩を進めた=2日午前9時13分
 縦走5日目のこと。狐穴(きつねあな)小屋から以東岳までの1時間、発電機や食料が入った学生のザックを背負ってみた。ズシリとくる重みに両肩がちぎれるような思いだった。6日間、これを黙々と運び続け、縦走企画を成功に導いてくれた学生たちの若さとパワーにあらためて感謝したい。

 2003年の朝日連峰縦走に比べ、今回は雪の豊富さが目立った。主稜線(りょうせん)沿いに雪渓が多く残っていたことは、花々の多彩さにつながる。雪解け後に山肌を彩る初夏のチングルマ、ヒメサユリと、秋を告げるタカネマツムシソウなどが同時に咲き、目を楽しませてくれた。

 竜門小屋管理人の遠藤博隆さん(57)=中山町=が「今年の朝日は春から夏を通り越して、一気に秋になった感じ」と話すように、天候にはあまり恵まれなかった。下界に下りてきて、山上の冷気とは異なるむっとする暑さに戸惑ったほどだ。

 土砂降りかと思うと、一転快晴になり、再び荒々しい顔をのぞかせる。山の自然の力の前に、人間は実に小さな存在だ。逆に刻々と相貌(そうぼう)を変えるからこそ、何度入っても新たな発見がある。そして強大なものに耐え、受け入れた末に、喜びが開け、慰めを得る。山は、そんなことを教えてくれる。まるで人生のように。

(朝日連峰縦走取材班=報道部・鈴木雅史、堀川貴志、小林達也)
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