談話室

▼▽歩道に収まり切れず、車道にまではみ出した数十万人の群衆が叫ぶ。「万歳!ベーブ・ルース!」。1934(昭和9)年11月、米国選抜チームの一員として来日した「野球王」を歓迎する東京・銀座の光景である。

▼▽すっかり気を良くしたルースは沿道の日章旗と星条旗を掴(つか)み取り、パレード車の後部座席に立って振り回した。日本の大陸進出などで日米関係が悪化していた時期の熱狂ぶり。当時の駐日米大使グルーは日記に書いた。「ベーブ・ルースは私よりもはるかに頼もしい大使だ」

▼▽「大戦前夜のベーブ・ルース」(ロバート・K・フィッツ著)の一節を引いた。83年後、今度は「和製ベーブ・ルース」が米国を席巻しそうな勢いだ。米大リーグ、エンゼルスへの移籍を決めた大谷翔平選手が現地の公開入団記者会見で千人を超えるファンの歓声を浴びた。

▼▽投打の「二刀流」の先駆者ルースを「神様と同じぐらいの存在」と称(たた)えつつ「野球をやっている以上は少しずつ近づいていきたい」。来日が野球人生の終盤だったルースに対し、大谷選手にはまだ23歳の伸びしろがある。プレーを通じて両国をつなぐ名大使になってほしい。

(2017/12/12付)
最新7日分を掲載します。
  • 12月12日
  • ▼▽歩道に収まり切れず、車道にまではみ出した数十万人の群衆が叫ぶ。「万歳!ベーブ・ルース!」。1934(昭和9)年11月、米国選抜チームの一員として来日した「野球王」を歓迎する東京・銀座の光景である。[全文を読む]

  • 12月10日
  • ▼▽木村拓哉さん演じる侍が藩主の御膳(おぜん)に箸を付けるや倒れ、一命を取り留めるも失明する。藤沢周平さん原作の映画「武士の一分(いちぶん)」は主人公が「毒味役」だった。だが実際にあった役職かと問われると、戸惑ってしまう。[全文を読む]

  • 12月9日
  • ▼▽目玉おやじが茶わん風呂に漬かる。水木しげるさんの妖怪漫画「ゲゲゲの鬼太郎」である。眠くなって寝ると目はどうなるか-。にわかに思い浮かばない場面だが、「人間と同じだから眠い時は目をつぶる」(作者)。[全文を読む]

  • 12月8日
  • ▼▽1897年に北海道阿寒湖で球状の緑藻を発見、後に「毬藻(まりも)」と名付けた人物が県人だったことをご存じだろうか。飽海郡松嶺(現酒田市)出身で当時札幌農学校の学生だった川上瀧弥(たきや)(1871~1915)である。 [全文を読む]

  • 12月7日
  • ▼▽文壇きっての料理人だった檀一雄は、青森県弘前市の一杯飲み屋で同席者から薦められ、ハタハタの卵ブリコを酒肴(しゅこう)として食した。粒々を●(か)むのに難渋して、十分に咀(そ)嚼(しゃく)できた「少年の日に返りたい」と感慨に耽(ふけ)った。 [全文を読む]

  • 12月6日
  • ▼▽「アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ」。明るい振る舞いの中に、既に凋落(ちょうらく)の種が宿っている。そのような意味であろう。太宰治の小説「右大臣実朝」で、鎌倉幕府の3代将軍だった源実朝がひとりごちた言葉である。 [全文を読む]

  • 12月5日
  • ▼▽パシッと駒音が響く。学校帰りの児童らが真剣な表情で将棋盤に向かっていた。JR天童駅ビル内の天童将棋交流室をのぞいてみた。15歳の藤井聡太四段の活躍が刺激になっているのだろう、どの子も目が輝いている。[全文を読む]

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