JR羽前山辺駅から北へ2キロほど進んだ左沢線の西方。山形盆地断層帯南部を構成する寒河江-山辺断層の一角、山辺町大寺地区で2005年11月、過去の地震の痕跡を探るトレンチ調査が行われた。実施したのは産業技術総合研究所活断層研究センター。「この場所は以前、山形県も調査したが、発生時期の絞り込みが緩いなど課題があり、さらに詳しく調べることにした」。当時の主任研究員・遠田晋次(現・京都大地震予知研究センター准教授)は再調査の狙いを語る。
痕跡1回分
遠田らは深さ4メートルと1.5メートルの大小二つのトレンチ(溝)を掘削。その結果、過去1万2000年分の地層が露出した。しかし、大地震の痕跡はわずか1回分、その時期は地層の複数箇所の年代測定から4200年~5000年前だったことが分かった。
山辺町での調査の直前、遠田らは山形盆地断層帯北部に位置する大石田町でもトレンチ調査を行っている。大石田では、過去1万年間に6~7回の地震が発生した痕跡が見つかった。
地震活動が活発な北部に比べ、明らかに静穏な南部という構図。「南部では1万年以上もの長い間、本当に1回しか大地震がなかったのだろうか。地震の痕跡があまりにも少なすぎると不思議に思った」。遠田は当時を振り返る。
遠田は「活動履歴や断層の分布状況から、山形盆地断層帯は寒河江川付近を挟んで南北に二分される」と言う。実はこれが重要な意味を持つ。地震の大きさは活断層の長さによって決まるとされているためだ。
山辺町大寺地区で行われたトレンチ調査の現場。山形盆地断層帯は南北で活動周期が異なることが分かった
長さと比例
活断層研究の第一人者・松田時彦の著書「活断層」によれば、最大3メートルほど大地がずれた北伊豆地震や陸羽地震では地震断層の長さは30キロ程度。一方、最大8メートルものずれが生じた濃尾地震の断層は長さ80キロ。断層の長さと地震の規模には比例関係があり、「断層が長いほど大きな地震をおこす可能性がある」と記す。
山形盆地断層帯の全体の長さは60キロだが、北部29キロ、南部31キロ。政府の地震調査研究推進本部は、それぞれが単独で動いた場合の地震の規模はマグニチュード(M)7.3程度としているが、北部と南部が連動した場合、M7.8程度の大地震が起きると想定している。
「山形盆地断層帯は南北に二分される」とした遠田だが、一方で、同時に動く可能性を完全には排除しなかった。「山辺で唯一見つかった地震イベントは4200年~5000年前。これは大石田町のスキー場付近での地震イベントの一つとほぼ重なるんです」
「断層帯南部は県内で最も人口が多い山形市を走っており、調査の重要性が高い。また軟らかい堆積物が北部より厚く、仮に同じ規模の地震が起きた場合、北に比べて揺れやすい。だからこそ」。遠田は続ける。「今後、南部を重点的に調べる必要がある」=敬称略
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