過去に繰り返し動き、今後も再び活動すると考えられる断層。それを活断層と呼ぶ。1995年の阪神大震災以降、注目されるようになったが、一体どんなものなのか。活断層に詳しい山形大の八木浩司教授の案内で、山形盆地断層帯をたどった。
「本来スムーズな傾斜になっているはずなのに、あそこだけ坂が急になってるでしょ?」。山形市松原。橋の上から遠く奥羽山脈を望むと、赤い鳥居が小さく見える。確かに斜面がきつくなっている。「あれが活断層地形です」
八木教授によると、蔵王と瀧山(りゅうざん)の間に、かつてもう一つ山があったという。「10万年前に噴火して崩れ落ちた。その際、山津波が発生し、このあたりまで流れて止まった」。当初は、山頂からふもとまで滑らかな勾配だったはずだが、ある時、直下で断層が動き、急激に斜度が変わった。
奥羽山脈の西側には南北に盆地が続いている。山形盆地も含め、それらはいずれも断層活動などによって形成されたという。エネルギー源は、今回、東日本大震災を引き起こした太平洋プレートの沈み込み運動だ。東から西へ圧迫されるため、地盤が隆起するなど、断層活動が起こる。東西方向に力がかかるので、東北の活断層は多くが南北に細く長くなっている。
寒河江市の高瀬山。航空写真で見ると、山というより小高い丘という印象で、南西には山を切り取るように最上川が流れている。「ほら、白波が立っているでしょ? あそこは断層がずれた時、段差ができて滝になった所。そして、川底を流れる石などで浸食され、瀬になった」
「山の上に行ってみましょうか」。神社の参道を通り、笹やぶを抜ける。間もなくして視界が開けてきた。「両側がストンと落ちているでしょ。この部分は昔、最上川の川床か河原だった。それが断層運動によって盛り上がり、細長い台地として残った」
寒河江市の高瀬山(左手前)を上空から撮影した写真。細長く隆起している様子が分かる。左を流れているのは最上川(山形大・八木浩司教授提供)
陸域の活断層で発生する地震は千年から数万年の周期とされる。人間の一生に比べるとはるかに長い間隔だ。地震調査研究推進本部によると、山形盆地断層帯の平均活動間隔は、北部が約2500~4000年、南部は2500年程度。地震は活断層が確認されている場所だけで起こるわけではない上、周期も長く、身近に感じることは困難だが、今後30年以内に地震が起こる確率は最大8%と高く、想定マグニチュード(M)は全体で7.8。ひとたび揺れ動けば、大きな被害が懸念される。
「山形には神話がある」。八木教授は独特の表現で警鐘を鳴らす。それは安全という神話だ。太平洋側から圧迫され同じように形成された会津盆地、横手盆地では、それぞれ慶長年間、明治時代に大きな地震が起きている。「幸い、本県では近年、大きな災害がないが、これまでなかったということは逆に怖いということ」。そして続けた。「だから警戒が必要なんです」
高瀬山のすぐ隣を流れる最上川。白波を指し示し、「断層がずれて滝になり、浸食されて瀬になった」と解説する八木教授
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